第138話 夢での再会
実際のところ、わたしが1日で、本当に拙いとはいえ形に出来たのは、シス様のおかげだ。
なんでも彼女の魔力量は生まれながらに、膨大なもので、かの魔王アザー・ホーストの再来とまで呼ばれているのだとか。
アザーを思い出させるとは、ミリア師匠の言なので、やはり相当なのだろう。
そして、私が身体強化という魔法をオリジナルとして使っているのと同じように、現在彼女にしか使えない魔法がある。
それが魔力譲渡。内容は字から想像できるだろう。
自分の魔力を他人へと分け与えることができるのだ。
本来魔力というものは体内をめぐるものであり、他人に受け渡せるようなものではない。
一瞬献血を思い浮かべたが、あれは長年の研究によって磨かれた現代医学という魔法のような技術と、長年の研鑽によって作られた現代技術による道具によって可能になる奇跡だ。
適当に血を出して、他人に押し付けるなんてことは誰もしないだろう。
しかし、彼女は膨大な魔力とともに、その目で魔力の質を正確に見抜くという才能の持ち主だった。
絶対音感ならぬ絶対魔力。
彼女は、譲渡する魔力の質、つまり外に出る魔力と体内に留まる魔力、2種類の魔力の割合を完璧にその時の相手に合わせることで、魔力譲渡という魔法を成功させている。
なお、いい加減言葉が長くなるので、師匠が外に出ようとする魔力を放出魔力、体内に留まる魔力を循環魔力と名付けることになった。
魔力の質とは、実質的にこの2種類の魔力の割合で決まるらしい。
なんとなくカクテルを思い出させる。
なんにせよ、シス様のおかげで、私は魔力の消費を気にすることなく繰り返し練習出来たし、彼女が純度の高い放出魔力を手のひらに纏めてみてくれたので、参考にできた。
ユニは武の天才だが、シス様は魔の天才というべきか。
私も、それなりに自信があったのだが、こうしてみれば中途半端な才能かもしれない、とさえ思えてくる。
実際、私は才能があるわけではなく、前世の経験のおかげで、手持ちのカードで出来ることをする、という考え方を昔からしているだけだ。
聞けばシス様は魔道具作りの才能もあるらしく、本当の天才とはいるものだと驚かされた。
そんな風に一月程訓練を積んでいた。
流石に、現皇帝であるシス様をそうなん度も呼び出すことは出来なかったが、それでも時間を見つけ手を貸してくれている。
その分訓練はハードになるのだが。
今では、シス姉という呼び方にも違和感を覚えなくなり、内心でもシス姉と呼んでいるあたり、私も変化しているのだろうか。
その日も、訓練に付き合ってくれた彼女を見送った後は、家に戻り、泥のように眠りにつくのだった。
「久しぶりですね。壮健なようで何よりです。」
気づけば白い空間の中、本人が言うように懐かしい女性と対峙していた。
いや、本人でいいのだろうか?
彼女の言を信じるならば、彼女こそ、この大陸で信仰されている女神アレクシアだ。
「お久しぶりです。女神様。」
一年程まえ、聖地都市エルムにあるアイラの実家にて出会って以来か。
その時も私の夢の中でのことだったが。
女神というだけあり、相変わらず美しい姿をしている。
突然の再開にあまり驚かないのは、女神の力か、それとも私が何となく予想していたからだろうか。
「女神様、今日は何の御用でしょうか?」
悩んでいても答えは出ないだろうと、質問を投げかける。
たしか私の思考は読まれているそうだが、言葉にしないと反応してくれないのは、前回と同じらしい。
「いくつか、あなたに伝えたいことがありまして。こうして夢の中へ、お邪魔しました。」
「伝えたいこと、ですか。」
どんなことだろうか。
その後、女神が語る話は、女神から見た歴史の話だった。
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