閑話 ユニと護衛依頼2

ミリアーヌ様と合流した私は、今ゼルバギウス家の馬車に揺られて貿易都市クーベルへと向かっている。

ルーク達と人形劇を見た街で、何よりアイラと出会った思い出の街。


「ユニは、あの後ゴランのダンジョンに行ったのよね?」

「ん。行ってきた。」

ミリアーヌ様、改めミリアーヌにそう声をかけられる。

というのも合流した宿を出ようとしたあたりのことなんだけど。


「ユニさん、実はお願いがあるんです。」

と、ミリアーヌ様が声をかけてきた。

「?なんですか?」

今は雇われているんだし、この人なら変なことは言わないと思う。

だから、軽い気持ちで聞き返した。

「その、ユニって呼んでもいいですか?」

と、不安そうに聞いてくるミリアーヌ様。

こんな時になんだけど、改めてミリアーヌ様は可愛い。私は同性愛は持っていないけど、ミリアーヌ様を見ていると、女の子を好きになってしまう人がいるのも分かる気がする。

と、そんなことは置いといて。

なんだ、そんなことか、と内心胸をなで下ろす。

「もちろん、構いませんよ。」

と答えると、不安そうだったミリアーヌ様の顔が、途端に花が咲いたように笑顔になった。

うん、可愛い。

なんてほっこりしてると、ミリアーヌ様から予想外の言葉が出てきたのだ。

「それで、ユニにも私のことをミリアーヌと呼んで欲しいんです!じゃなくて、欲しいの!」

両手をそれぞれ握りしめながら、勇気を出しましたと言わんばかりにそう言ってくる大貴族のご令嬢に、私は、一瞬、なんと答えたものか分からなくなる。


少し悩んで、結局私は頷くことにした。

とはいえあまり悩まなかったけどね。

相手が貴族だからとは思ったし、逆に雇い主のお願いを断るのもどうなんだろうとも思ったりもしたんだけど。

それよりも、私自身ミリアーヌ様、いや、ミリアーヌともっと仲良くなりたいと思っていたから。

私が頷くと、ミリアーヌの顔に笑顔が浮かんだ。

「良かったですね。」

と声が聞こえる。

女騎士のマイヤさんだ。

良く見れば、周囲の人たちがこちらをみて微笑んでいる。

そういえば、他の人のことを気にしてなかったけど、みんな反対じゃないのかな?

と思って目を向けると、マイヤさんが教えてくれる。

「ミリアーヌ様は、ユニさんと仲良くなりたいと仰ってましたから。」

そうなの?

なんて思ってると、

「ちょっと!マイヤ、内緒にしてて!」

なんてミリアーヌが顔を赤くしている。

けど、

「良いではないですか。こうして普通に喋れるようになったのですから。」

なんてマイヤさんは軽く流している。

「むう。」

なんて頬を膨らませるミリアーヌも可愛いけれども。

と、ミリアーヌが気付いたように、

「どうせなら、あなたも仲良くなったら、マイヤ?」

なんて提案をしている。

「私もですか?」

とキョトンとするマイヤさん。

が私の顔を見ると、

「そういうことみたいだが、どうだ?」

と聞いてくる。

「ん、よろしく。」

まあ、ミリアーヌとのことに比べればなんてこともない。

気付いたら、予想しない旅の始まりになったみたいだ。



馬車の中。

今ここには、私とミリアーヌ、騎士のマイヤ、ミイドのマーサさんの4人が乗っている。

そして、最初の話に戻るのだ。


「凄いわ。どんな魔物がいたの?確か、ダンジョンってアリの巣なんでしょ?」

とミリアーヌが無邪気に聞いてくる。

「うん。それに大きな虎の魔物もいてね。」

と私がそれに答えていく。

そこに、

「そうか。」

とマイヤが頷き、そんな私たちを見て微笑むマーサさん。

私たちの馬車は平和だ。


ルークは今頃、何をしてるかな。

馬車の窓から空を見上げて、そんなことを思うのだった。

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