第13話たまには子どもらしく

魔法拳士の夢もいいが、それだけでは人生つまらなくなってしまう。

せっかく友人が出来たのだ。

時には子どもらしく大いに遊ぶことも大切なことだ。


私はガインの街に来ている間、ラト師匠の買い物に付き合うか道場で修行をしているが、それ以外の時間は、ほぼユニとテオの2人と過ごした。

この世界、もしくは地球の中世程度では子どもも立派な労働力だった。

道場に来ている子ども達も、道場に来る時間以外は大抵家の仕事の手伝いをしていた。

その中で、私たち3人は働かなくていいという点で、特殊な例で自然一緒にいる時間が増えたのだ。

一応断りを言えば、私達は他の子どもより楽をしていたわけではない。

私は以前言ったように、魔物を狩ってお金に変えていたし、ユニとテオもカイゼル師匠に同行しエルバギウス大森林に入り魔物の討伐を行なっている。

私が冒険者ギルドで、ラト師匠の弟子として登録したのを覚えているだろうか。

ユニとテオも同様に、カイゼル師匠の弟子として登録されている。カイゼル師匠自身は道場を主体にする元冒険者だが、冒険者資格自体は残っており、自分の子ども達や特に優秀な門下生を連れて、時折森での現地修行を行なっている。その際に得た魔物の素材は討伐者の取り分らしい。

つまり何が言いたいかというと、私達はこのようにある程度働いていることを主張したいのだ。


話を戻そう。

知っての通りガインの街は、周囲を城壁に囲まれている城塞都市だ。

これは、エルバギウス大森林がすぐそばにあり不意の魔物の群れの襲撃に備えるためだ。

危険な立地ながら同時に魔物素材の一大産地でもあり、冒険者だけでなく商人の行き交いも多く、ゼルバギウス領どころかグラント王国内有数の大都市でもある。

魔物の群れの襲撃は、滅多にはないが、しかし稀にそういうことがあるらしく、備えておく事がどの大都市でも当たり前らしい。

確か異世界モノではスタンピードとか言われる現象だ。

前回あったのは、100年以上前らしく体験した人はほとんどいない。

100歳を超えると話すミリア師匠はその例外の1人だ。

実際ミリア師匠については分からないことも多いが、しかし疑う理由もその気もないので、その時のことを聞いてみた。

なんでも原因は、森に住むソードアントという顎の大きなアリ型の魔物の異常繁殖らしく、本来ソードアントを捕食する側の魔物達が森の外に逃げ、それを追いかけたソードアントの群れごと、そのまま街に向かってきたらしい。

その際は既に森で暮らしていた師匠が街に危険を知らせ、ある実力以上の冒険者達が集団で迎え撃つことで奇跡的に犠牲者を出さずに済んだそうだ。

しかし、どうしても討ち漏らしはあり、壁が無けれ街への侵入を許して大惨事になっていただろうとは師匠の言だ。

まあそういうわけでガインの街は高い壁に囲まれ、その結果、城塞都市の宿命として使える土地には限りがある。

まあ、そのために子どもの遊び場が不足してしまうのは致し方無いことなのである。


ある日私たちは誰もいない道場で、ボール遊びをしていた。

布で作ったボールを使い、真ん中に立つ1人を残った2人が挟みボールをぶつける。要はドッジボールの最後の場面をイメージして貰えばいい。

当たれば当てた人と交代するルールだ。

ボールは随分圧縮されていて、当たれば少し痛い程度には硬くなっている。

つまりそれなりのスピードが出るのだが、ユニが真ん中に来た時はまさに圧巻だった。

いくら投げても当たらないのだ。

綺麗な髪をキラキラと輝かせ、楽しそうに体を動かすユニ。

目がいくつもあるのかと疑いたくなるほど、ギリギリで避けている。

最後は私とテオが根負けし座り込むと、ユニは

「まだまだだ甘い」

と見事なドヤ顔をしたのだった。

あまりに悔しく、念力を使い縦横無尽にボールを動かすも、全く当たらずむしろテオ喜ばせた。

「もっとやって!もっと早く」

こんなに大きな声を出すユニを初めてみる。

顔を輝かせ笑う彼女に思わずどきりとさせられた。

そして全力で動いた後は幸せそうに昼寝をするのだった。

ユニはこんな感じに体を動かすことと睡眠を心から愛する、そんな少女だ。


逆にテオは、体を動かすのは嫌いではないが、それより頭を使うゲームを好んでいた。

彼は特にゼルスというチェスのようなゲームが好きだったが、彼の家族はみんなあまり興味が無いらしく、私がルールを覚えてからは良くせがまれた。

「魔法使いを猟師の前に。これでルークの王様は動けないね。僕の勝ちだ。」

勝敗は半々くらい。

ゼルスにおいては、私たちはちょうどいいライバルだった。

私に勝つと彼はにっこりと笑う。その顔はアイドルのようで、双子のユニを除けば、彼以上に可愛らしい顔を私は他に知らない。

そのことを、ゼルスをしている途中、手を考えるのに集中してポロリと言ってしまったことがある。

しまったと思った時はあとの祭りで、顔を真っ赤にしたテオはなかなか許してくれず、ラト師匠の用事が終わり、帰る間際にやっと許してくれたときは、心底安堵したものだ。


私たちの生活はこんな感じだった。

まずは疲れるくらい体を動かし、ユニが昼寝をしている間にテオとゲームで遊ぶ。この流れが、1つのパターンになっていた。

他には街を探検したり、街の中でかくれんぼをすることもあった。


振り返れば他愛のない日常だったが、3人で遊んだ日常は間違いなくかけがえのない宝物だった。

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