第3話 続・魔法の自主練習

「あら、ルーク様。おはようございます」

気付くと夕方になっていた。

幸いにして体も心もおかしいところはない、と思う。

今日の私の担当のメイドが、声をかけてきた。

茶色い髪を短くまとめた、10代中頃の美しいというより可愛いらしい少女だ。

前世の私が声をかければすぐさま警察を呼ばれることだろう。

因みに私の担当は『罰ゲーム』と呼ばれ、普段はローテーションだが、実際に罰則としても扱われているらしい。

現実に彼女、確かリアという名前のメイドも極力私の顔を見ないようにしているのが分かる。


まあ、気にしても仕方がない。


さて、この状況も、前世の知識で覚えがある。

おそらく、魔力の使いすぎではないだろうか。

良くある話といえば良くある話だ。

幸いにして、今回は昼食を食べた後のベットの上だったため、長めの昼寝と思われたらしい。

寝込んだ直後の割に扱いが軽いが、そのまま永眠しても構わないんだろう。


「では、夕食をお持ちします」

出来るだけ関わりたくないというように、リアは事務的に話し、そして退室する。

おそらく厨房に向かったのだろう。

2歳児に対する対応として確実に間違っているが、仕方ない。

むしろ前回、私が目を覚ました際に両親が来たことの方が、驚きだった。


その後夕食が届き、食べ終えた私は「疲れた」と口にすると、すぐにベッドに入る。

それを見たリアは

「では、お休みなさいませ」

そう言い、すぐさま退室した。

これが私、ルーク(2歳)の日常的な風景だ。

部屋の中でおもちゃや本を手に取ることもあるが、基本的に誰も私と関わろうとはしない。当然以前の私は自分が嫌われてるなど考えず、相当なストレスの中日々過ごしていた。

前世の記憶が戻った今、私の意識としては45年を生きた後、ルークとしての生を生きていると考えている。

前世も今も別人で無く、2年間のルークも死んで消えたわけでもない。

どちらの経験も私の経験として今後を生きていこう。


さて、話を戻すと魔力を使って気を失うことについて、何度も繰り返す事で魔力が増えるという話を読んだ記憶がある。

あくまでフィクションだが、今の状況が既にフィクションのようなものだ。

試せる事はなんでも試すべきだろう。

となると、今日は他に出来ることもなさそうだし、もう一度魔力を出すということをやってみよう。

そう思い、再度手のひらの上に魔力を出す。

先程はおそらく10秒程度で気を失ったが、なかなか気を失わない。

これは、と思った矢先、意識が沈んでいった。

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