第2話 魔法の自主練習

容姿を理由に相手を嫌う。

その善悪とは無関係に私の前世が現実を教えてくれる。


醜いものは嫌われる


どれだけ倫理を説こうとも、どれだけ文明が進もうと、異世界だろうとなんだろうと。


圧倒的多数の人間は醜いものを嫌い、差別する。

ほんの一部の例外は、起こり難いからこそ奇跡という。

だから、前世の家族に会えた私は幸せだったんだろう。

だから、今世の両親を責める事は私には出来はしない。

人を好きになるという事は、当たり前にできる事ではないからだ。


だから私は、嫌われる事を受け入れ、好かれることを諦めた。

それは、前世の知識があるから選べた選択肢なんだろう。

好かれようと嫌われようと、私は私に出来ることをする。

幸いにして体の自由はあるしな。


私はそうやって折り合いをつけていた。

私の中の良識と呼ばれるであろう部分は、そんな気持ちに横槍を入れる。

こんな訳の分からない理不尽な状況を簡単に受け入れるな。もっと狼狽えろ。

とか、

子どもを愛せないなんてあってはならない。もっと周りに怒りを覚えろ。

と言った具合に。

しかし、ここでも前世の経験に私は従うことにした。

ああ、確かに訳がわからないのも愛されないのも理不尽だ。

しかし仕方のないことだ。

私の前世は仕方のないことだらけだった。

不細工なのも、弱いのも、全部全部仕方のないことだった。

せめて頑張った勉学では結果を残せたじゃないか。それで家族以外に認められることは無かったが。

仕方のないことは諦めろ。それが、前世の人生全てを使った教訓だ。



そうやって私は自分の心をねじ伏せた。

そして、改めてこの世界と自分の立ち位置を考える。


とはいえ、所詮はまだ2歳。

知っていることなど見聞きしたこと以上にはない。

そのため出来るだけ知識の集め、この世界と前世の地球という世界との違いを認識する必要がありそうだ。


とはいえ1番の違いはすぐ分かる。

魔法だ。

この世界で魔法は日常的なもので、火を起こしたり、水を出したりと生活の至る所で使われている。魔力は一般的に持っているようで、みんなの様子を見るに特別な力ではないらしい。


前世の記憶が戻ったのは、昼前。

両親は私を置いて戻っていた。

今日の仕事をするのだろう。

昼食にパンがゆと水を摂った私は、ベットに横になりながら、自分にも魔力はあるのだろうかと思い、目を閉じて体に意識を向ける。

すると血液の流れを感じるように、魔力が体の中を動いているのがわかった。

更に意識してみると、手や足など体の一部に魔力を集める事もできるらしい。

だけでなく、手のひらの上、体の外に滲み出す事もできる。

逆の手で触れてみると、熱くもなく冷たくもなく、名状し難い何かがそこにある事だけが分かる。

不思議な感覚だ。

と、急に体が重くなり、そのまま私は気を失っていた。

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