第4話 危機

 「いけぇぇぇぇぇぇ!!」零はミサイルをぶっ放つ。だが、DVLはそれを避けて接近してくる。


 零は武器は捨てて、肉弾戦に持ち込んだ。


 GLFの右フックがDVLの顔面に炸裂しふらついて倒れこんだ。


 「かかってこい」零は緊張から手が震えていた。それを抑えるように、独り言が多くなる。自分を安心させるように。


 DVLが立ち上がると、笑いだした。人間の声だ。


 「お前、なかなかやるじゃないか」男の声で語りかけてきた。


 零はまた、状況が呑み込めなかった。人が乗っている。無人兵器じゃないのか?


 『大丈夫よ。安心して。目標は無人のはずよ。人工知能が貴方を困惑させようとしているの』志伊良が宥めた。


 「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」零は勢いよくコントロールレバーを操作し、DVLを殴り続けた。


 DVLの機体がゆっくりと倒れたので、股がり、中心部をまた殴る。すると、コックピットが出てきた。人が乗っていた。


 「お前に人が殺せるのか?」スピーカーから流れる、気持ちの悪い声は、零をもっと混乱させた。


 「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」右手でコックピットを潰した。


 「うわああああああああああああああああ」零は人を殺してしまったことをひどく後悔した。


 

 時刻は刻一刻と過ぎ、七時になった。ミカエルは、機体を光らせながら、東京都に帰っていた。


 「――もう、死のうかな」零はそんなことを考えていたとき、空中の前方から謎の機体が出現し、囲まれた。数は八体。正体はすぐにわかった。DVLだ。


 スピーカーから男の声が流れる。 


 「貴様を包囲した。我らに付いてこい。反抗すれば分かっているよな?」DVLの一体が、手に持っていた剣をGLFのコックピットに向けた。


 零は、焦りと緊張でレバーを握る手が濡れていることに気づいた。それでも……ゆっくりとレバーを傾けた。殺されるかもしれない……。そんな不安が頭をよぎった。



 §§§



 零は辺りを見渡した。ここは何処かの軍事施設だろうか。銃を持った兵士が、施設内を警備しているように見える。


 すると、おびただしいサイレンが全体を包み込んだ。DVLが続々と着陸していく。それと同じようにGLFも地に降りた。


 兵士の誘導に従って歩くと、目の前にエレベーターが出てきたので、指示されたように足を機械に接続する。


 ゆっくりと下がるエレベーター。そんなとき、零は不安と罪悪感で胸を締め付けられていた。


 「今からでも遅くはないか?」零は考える。足の機械を壊して、一気に上空に飛び立つ。どれほど機体に損傷をうけても、マッハで動けば大丈夫なはず。


 でも、零は気力がなかった。いや、出せなかった。それは、人を殺してしまったからだ。


 レバーの側に設置されている自爆スイッチの位置をいつの間にか確認していた。

 

 

 


 

 

 


 

 


 


 

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惨殺聖書 ケルベロス @motokionishi

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