第3話 夢や希望は捨てなさい
零はミカエルの機体をぼうっと眺めた。
「これから先、俺はこのロボットに乗って日本を守らなくてはいけないんだな」自然とにやけた。そんな責任重大で、しかも俺しか出来ないことを、遂行するというのはかなり気持ちがいい。もはや、正義のヒーロだ。
零は腹が減ったと思ったので、ゆっくりと立ち上がり、食堂に向かった。
LP(Lost paradais )研究所は、かなり広く、隅々がまるでSF映画のような感じだ。しかも、食堂の飯はかなり旨いと評判らしい。そのことを志伊良から聞かされていた零は期待を胸に抱き、メニュー表をじっくりと見て、豚キムチ定食を選んだ。
一口食べてみると、キムチのほどよい辛さが白米を余計に掻き込ませる。これが俗に言う「ご飯がすすむ」ということだろう。かなり旨い。
零は食堂に完備されている炊飯器から白米を大量にすくい、キムチが絡んだ豚を白米の上におき、一緒に食らう。駄目だ、このままじゃ太るな。
そんなことを思っていたら、目の前の席に見知らぬ男性が座った。
「君が第一シリーズだろ?」突然訪ねられた。容姿は、研究所の制服を着ているので、志伊良と同じく研究者なのだろう。頭皮が八割見えているし、かなり老けているので、六十代ぐらいだろう。
「おいおい、返事ぐらいしてくれよ。第一シリーズ君。君の噂は聞いているよ。確か……創君の息子だろ? まぁ、その言い方が正しいかどうかは分からないけど、医学的には親子関係だよ」男性は笑った。でも、零は戸惑っていた。何故なら、男性が意味不明なことばかりを発しているからだ。零は肩をすくめた。
「すみません、言っている意味が俺にはいまいち……よく分からないんです」
「簡単だよ。それは……」
『DVLが、北海道の札幌市で確認。第一シリーズは、直ちにミカエルを搭乗せよ。繰り返す』アナウンスが声を遮って、部屋中を響かせる。
「帰ってからまた、話をしよう」
零は勢いよく部屋から出て、地下に向かうエレベーターに乗り込む。
あっという間に着き、ミカエルに乗り込む。タッチパネルで、必要な設定をして、空中に向かい、放り出される。そこから翼をはためかせ、北海道に向かう。
§§§
「うおおおぉおおお!!」零は叫びながらコントロールレバーを操作し、ライフルの弾丸をDVLに撃ち込んだ。だが、全く効いていない。
「な、なんで?」かなり困惑した。どうすればDVLを倒せるかが全く分からない状況だ。
DVLが手に持っていたある武器をこちらに向けた。それでGLFの機体にわずかな爆発が起こり、衝撃で空から落ちた。
「ぐわぁぁ!!」背中の悶絶とした痛みが、零を苦しめた。
『大丈夫、安心して。ゆっくりと深呼吸をして』志伊良が無線で語りかける。
『いい? まだ伝えてなかったけどミカエルの動力は原子力なの。もし、機体の大部分が破損か、機体が消滅するような爆発が起きた場合、放射線が辺りを巻き込む。その効果は絶大で、周辺地域は二百年は生活が出来ない状況に陥るわ。勿論、除染作業をして二百年だから』一つ一つの単語が零を驚愕させた。
“天使から悪魔に堕ちる”それだけは絶対に駄目だ。
零は再びコントロールレバーを握り、DVLに向かって弾丸を撃ち込む。
『いい? 厳しいことを言うかもしれないけど、貴方はミカエルに乗った時点で、人生を神に奉仕したのよ。この戦争が終わるまで夢や希望は捨てなさい』
「うわぁぁぁ!!」零は武器をライフルからミサイルに変えた。それを我を忘れて撃ち込む。
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