僕の催促
担任の先生が教室に入ってきたことで僕たちの恋バナ会はお開きになった。
だが——。
「ああ、そういえば。図書委員の今日の当番が二人とも休みらしくてな。委員長と副委員長に代わりを頼みたいんだが、大丈夫か?」
朝のホームルームの最後に言い渡された指示は、奴らの視線を僕と彼女に引き寄せた。
図書委員長と副委員長、つまり僕と彼女。昨日の今日で再びやってきた、二人だけの時間。何という神のイタズラだろうか。
当然僕はOKを出し、彼女は返事が極小なせいでOKだとみなされた。
そして奴らの目が僕に強く訴える。必ず返事をもらえ、と。
その思いが優しさであろうと弄りであろうと、いずれにしても彼女から返事を聞き出すという覚悟を決めた。
待ちに待った放課後。
昨日と同じように図書室のカウンターの中で読みふける彼女のアホ毛は、なんだか落ち着きがないように揺れていた。
気になって仕方ないのを堪えながら仕事を済ませ、いつもより長く感じた放課後にもようやく終わりを告げる放送が流れ始める。
他の生徒はすでに図書室の外に出払った。残ったのは僕たち二人。僕の望んでいた展開だ。
彼女はアホ毛を依然ソワソワさせ、帰りの支度もせずに椅子に座っていた。
今朝の話を聞かれてこうしているなら、むしろ好都合、ありがたい。不確かな厚意を密かに受け取り、僕は彼女に問う。
「えっと……、いいかな?」
彼女の顔は昨日よりもはっきりと、しかし小さく縦に振れる。
「昨日、君に付き合ってくれませんか、って聞いたんだけど、覚えてる?」
彼女はまた頷く。
「えっと……その、出来ればでいいんだけど、返事を聞かせて、ほしいな……と……思って……」
なんて図々しいんだろうと思った。
一方的に思いを伝えて、その返事を半ば強制的に、言わざるを得ない状況を作り出してまで聞き出そうとしている。
罪悪感から、僕の言葉は途切れ途切れに口から零れる。
彼女を見ると、しかし僕の気持ちとは裏腹にアホ毛は「?」を形作り、そして僕は、今まで聞いたことのない彼女の声を聞くことになった。
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