彼女のアレ
「委員長です、よろしくお願いします」
毎年勝ち取ってきた安息の地でも、三年目ともなれば頭を任されることになる。他に経験者がいないということも相まって、自動的に僕は図書委員長になった。
そして同じクラスだからというだけの理由で、例の彼女は副委員長に任命されることになった。
新たな図書委員会の発足から早一週間、僕と彼女の関係は同じ委員会の知り合いでしかなかった。
あえて言えば、同じクラスだからなのか当番の日を一緒にされたり、委員長の仕事の補佐をしたりしたことくらい。
委員長の仕事は、図書室の本の管理や委員を取りまとめること。
他の人たち、特に後輩はとても聞き分けがよく、教えたことはしっかりこなしてくれる良い後輩たちだ。
その一方で例の無表情の彼女は、話を聞くには聞くが反応がまったくない、まるでロボットのようだった。
いや、今どきのロボットでもさすがに返事くらいする。会話だって難しくない。
僕はこの人が少し苦手だと思った。
しかしそのネガティブな感情は、委員会発足から一ヶ月も経たないうちに好転した。
図書委員の仕事は、図書室のカウンターの中で図書室を見張る、ただの監視だ。それに加えて、本の貸出の管理や手続きも並行して行う。
監視と言っても事件になるようなことはゼロに等しいし、高校生にもなって律儀に本を借りに来るのは、読書が好きな人か授業で調べ物をするときくらい。
好きな読書をしながら仕事ができる。そういう意味でも、やはり図書委員は穴場なのだ。
最高の読書スポットで、例の彼女と二人きりで本を読む。そんな毎日が続いたある日、僕はふと彼女の方を見て驚くべき現象を目の当たりにする。
彼女が本を読んで興奮していたのだ。
今この瞬間、彼女が読んでいた本がどんなものなのか、という興味は薄い。それよりも目を引くのは、意識を向けるべきは、彼女自身。
いや、正確には彼女のアレに、だろうか。
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