第11話 おさきにしつれいします

そんなこんなで街に出る決心をしたわたしですが、とりあえず数日はスローライフです。

魔法の練習もしなくてはいけませんし。

というわけで翌日。


「おはようシーナ!」

「おはよぉ。ふぁぁ。はや」


いえいえ、ちっとも早くありません。寝てないんですから。

日は登ってますけど、まだ夜中ですよね、夜中の31時とかですよね。

わたし、初めての場所だとあまり寝れないんです。そわそわしちゃうんです。かといってマイ枕を持ち歩くなんてしませんよ。マイ靴下があれば寝れます。......寝るときって靴下履きますよね?当然ですよね?


「シーナ寝坊だよ!魔法の特訓するんでしょ!」

「夜遅かった」


わたしいま夜テンションですから。そりゃ元気ですよね。


「起きてないね、顔洗にいこ」

「うん」


2人で外に出ました。遠くに川が見えます。ん~、二キロですね。間違いないです。

ええ間違いなくわたしの直感です。


「ちょっと遠いね...」

「うん」

「いつもどうしてるの?」

「うん」

「...シーナ?」

「うん?」

「おはよう?」

「うん」


さすがに寝起き悪すぎません?

寝てますよこれ。うん、しか言わないんですけど。

あ。いいこと思い付きました。


「シーナ今日マッサージしてくれる約束だよね」

「うん」

「シーナ今日わたしと1日遊んでくれる約束だよね」

「うん?」

「シーナ今日

「水魔」


ばしゃぁ!


「きゃぁ!!つめた!」

「わぁ!なに!つめた!」


シーナさんが水魔法を使いました。2人ともびしょびしょです。なぜかシーナさんも驚いてますが、やっと起きたみたいですね。


「...無意識に魔法つかったの?」

「...こうしないと起きないからっておばあちゃんに訓練されました」

「......毎朝びしょびしょなの?」

「......おばあちゃんが起こしてくれない限りは」

「言葉使いの前にそっちから大人になろうね」

「......はい」


どうやらいつも水魔法をつかって顔を洗っているようですね。便利ですね~。わたしには使えないのに。

しょうがないのでわたしが使える魔法使いますよ。もう。


「シーナ、せっかくだしもう全身濡れよっか」

「はい?」


シーナさんの腕をつかみます


「瞬間移動!」


さっき見えた川へ!







ばっしゃーーーーん!






って水しぶきを期待してたんですが、瞬間移動先が低かったので実際はこうです。


ぼんっ.........


地味です。失敗です。無言で立ち上がったシーナさんにもう一回やり直そうって言ってみたら二度とやらないでと怒られました。

フリですか?シーナさん定番がわかってますね。明日の朝楽しみにしてて下さい。


ってなわけで川まで来ました。ふたりとももう川から上がって、シーナさんの魔法で服を乾かした後、草の上に座っています。


「それにしても、ほのかの瞬間移動は他の人も巻き込めるんですね」

「ん?そういえばそうだね、なにも考えてなかったよ」


ふつうできるよねって思ってやってしまいました。自分の魔法をもっと知ってないといけませんね。

魔力のことも知らないと......って


「ねえシーナ」

「はい?なんでしょう?」

「わたし、魔法を使うときに魔力がなくなる感じとか全くしなかったんだけど......」


おじいさんが昨日提案してくれた対処法ですが、さっそくムリゲーだとわかりましたね。だってわたしそもそも魔力すら感じれませんよ。しゃべるだけで魔法が使えるので変な感じです。あとイメージですか。


「んー、それは心当たりがありますけど......」

「けど?」

「おじいちゃんがいるときの方がいいと思うので、あとでやりましょうか」

「ふ~ん?わかったよ」


ふ~ん?は納得はしてないけどいいよそれでって意味です。現代で、ふーんって使うと興味ないみたいな捉えられ方をしますが、わたしはそんなことないとおもってます。

<ふ~ん> が納得ですって意味で、

<ふ~ん?> が上でいったやつで、

<ふーーーーん> が怪しい、ほんとにぃ?って意味ですよ

同じ《ふ》と《ー》と《ん》でも意味が違うんですから、気を付けてくださいね。以上、ほのか取り扱い説明書より抜粋です。


「......じゃあ、家に帰してくれます?」



・・・



「まったね♪家で会おう!しゅんかんいど

「水魔!」


シーナさんの水魔法が顔面に炸裂しました。


「ぶわっ!ゴホッゴホッ、ちょっと!」

「甘いですよ?まだやります?」


シーナさんがニヤッてしてます......

また魔法を構えていますし。

......むむむ。瞬間移動って地味に名前長いんですよね。



......むむむ。どうしましょう。



............




ピカーーーン!思い付きましたよぉー!

勝ち誇った笑みをシーナさんに向けます、




可愛く手を振って、



「転移!」

「すい


続きは聞こえませんでしたね。きっとどうでもいい内容です。

さあ家に戻ってきました。

転移って言っても、しているイメージが同じなので大体同じ効果の魔法になったんですね。

呪文がちがくても同じ効果って地味にすごくないですか?もし一文字で言えたら最強ですよ。瞬間移動し放題、瞬間移動パラダイスですね。


さて、川に戻りますか。


「転移!」


シーナさんが少し離れたところでうずくまっています。


「あっ、シーナそんなとこに

「なんでよぉ。ほのかぁ。なんでいっちゃうのよぉ...ずずっ。友達じゃなかったのぉ?帰ってきてよぉ...ずずっ」


・・・


............え?


いやいや、あの...え?

ここまでになります?ちょっと歩けば家にわたしいましたけど。いや確かにちょっとひどいことしましたけど、わたし、すぐ帰ってくるつもりでしたし、からかってるだけでしたよ?

え?友達じゃなかったの?その発想は悲しすぎますよね?

相当飢えてたんですね。これはからかいの度合いも調整しないといけないかもしれません。


「シーナ?わたしここにいるよ?大丈夫だよ?」


震える手で肩をとんとんします。

そう、わたしの手が震えています。

この次のシーナさんの一言が大事です......


「あっ......!」


「.........」

「.........」


「.........」

「.........」


「ほのかぁぁぁっっ!!!」

「ひぃっ!」

ガシッ!

「逃がしませんよ?」


わぁぁ......怒ってます。ばり怒ってますね。

顔を真っ赤にしてシーナさんがわたしをつかんできます。さっきのを見られたのがめちゃくちゃ、ええそれはもうめっちゃくちゃ恥ずかしかったんでしょう。半泣きで、《帰ってきてよぉ》って言ってたら後ろにその本人がいるって黒歴史ですね。


...あれ?これだけ聞くと素晴らしい再会の場面じゃないですか。その方向で崩しましょうか。


「シーナ!わたしも会いたかった!」


ダンッ、エンダー!


「なにいってるんですか去っていったのだれですか帰ってきたのだれですか」


とはなりませんでしたね。


「帰ってきたのもだめだったか」

「帰ってくるときは言ってください!人の部屋に入るときにはノック!常識でしょう?!」

「え、人の部屋入ったことあるの?」

「ありませんよ!って大事なのそこじゃありません!」

「ないんだ。ごめんね変なこと聞いて」

「その目やめなさい!暖かい目しないで!」

「でもおじいさんおばあさんの部屋とかあるでしょ?」

「2人の部屋はいつもドアが空いてるんです!というかいまそんな話じゃないですよね?!わたし、怒ってるんです!」


話チェンジ大作戦失敗です。

作戦を変えましょう。名付けて、ごり押しべた褒め大作戦です。


「ごめんねシーナ。シーナがそんなにわたしのこと大切にしてくれてたなんて、すっごくうれしい」

「なんですか急に!ご機嫌とろうったって無駄ですよ」

「ううん、ほんとにそう思ってるの。わたし、シーナにあえて、友達になれてほんとにうれしいよ」

「なんですかそれ。.........ほんとですか?」

「ほんとほんと、だからさ、これからも友達でいてくれるとうれしいな、こんなかわいい友達いないよ」

「そ、そうですか...?で、でもさっき」

「さっきのは友達ならやるようなことだよ、。ちょっと遊んで、笑って、怒って、楽しいでしょ?」

「友達ってそうゆうものですか?」

「そうだよ!こんな可愛い友達がいるんだから、遊ばなきゃ!楽しまなきゃ!」


心ではこう言っています。

”こんなからかいがいのある友達がいるんだから、からかわなきゃ!いじらなきゃ!”


「そ、そうですか。友達って難しいですね」

「そう、でももうわたしたち友達でしょ?」

「....!はい!」


はっ、ちょれぇぇ!初めての友達枠がわたしでよかったですよ。この作戦は成功ですね。怒ってる女の子には、謝ってから、ちょっと外して幸せな気持ちにさせるような言葉を選びましょうね。女の子の落とし方パートワンです。


「じゃあシーナさんにマッサージやってもらおっかな」

「......はい?」

「あれ?朝約束したよね?やってくれる?って聞いたら、うんって言ってたよ」

「え?わたしそんなこと

「友達だよね?」

「............」



「ほのか、またからかってるでしょ」

「やべっ」

「やべってなんですか!もう騙されませんよ!わたしそんなこと言ってませんし!」

「いや、言ったには言ってたよ?ほんとに」

「そんな嘘ついてもだめですよ」

「ほんとなのに......」


これが日頃の行いというやつですね。信じてもらえそうにないので、もうさっさと帰りましょうか。


「じゃあ帰るよ、ほら、シーナ」


わたしが手を出します


「え、手握るの?」


なにやら顔を赤くしています。

いつもならからかうとこですが、いまはからかい疲れたので、さっさと握ることにします。


「そっ。よし。これでよし、転移!」


なんかずいぶん長い朝だった気がします。

シーナからかい日記とかつけたら面白いんじゃないでしょうか。

ニヤニヤしているところをシーナさんにジト目で睨まれて、顔を戻したわたしです。

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今日もいい天気! ころん @koronn

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