第10話 おげんきです
「そうじゃの、確かにすごいイメージ力ではあるが、マイナス面もある。それがなにかわかるかの?」
もちろんです。シーナさんと2人で話してたことですし。わたしはこくりとうなずきました。
「初めての魔法も軽くイメージしただけで使えちゃうから、日常生活で急に魔法が発動するかもしれないってことですよね」
そう、昼間の瞬間移動みたいに何気なく発した言葉が呪文ネットワークにひっかかった場合、勝手に発動してしまうかもしれないのです。
「そのとおりじゃ。さらに言うならば、ほのかがどんな魔法を使えるのかわからん以上、より警戒しておく必要があるんじゃよ」
いうなれば、わたし常にNGワード罰ゲームありってことですよね。しかもNGワードが何かは言ってみてのお楽しみと来ました。なんという鬼畜ゲー、運営に文句いいたいです。
「なにか対策はないんですか?」
「不確定じゃが、あるにはある」
さすがおじいさんです。
それはどんな?
という風な目をして続きを促します。
いま、なんだその目って思いました?
......そうゆう目ですよ。
「呪文を詠唱するとき自分の中から魔力が使われる感覚があるんじゃ。それを認知できれば、言い終わるまえに止めることができるかもしれん」
おお、なる...
............
それ無理ですよね。
「呪文が2文字だったらどうするんですか!止められませんよ!」
ゆーて3文字も怪しいです。《ふうま》って言い出してから止められますか?
ふうまって名前の人がいたとしましょう。
おーい!ふう......やべっ魔法が!。ってならないですよね。ふつうに無理ですよね。
「......そこは練習じゃよ」
「練習段階の暴発が一番やばそうなんですけど」
「じゃあ魔力を感知して口をとじる魔法をつくるとかどうです?」
「そんな魔法言う余裕あるならその前に自分で口閉じれるよ!!」
口閉じ魔法って実際につくったらどうなるんでしょう?
口閉じ魔法を言い終わってから、その魔法に使った魔力の残滓を感じて口を閉じるんですかね。なんて意味のない魔法でしょうか。
口を閉じますって宣言して口を閉じるのと同じじゃないですか。でもしゃべったら負けゲーム最強ですよ。小学生なら無敵の王になれます。
「と、とにかくじゃ。練習して、少しでも反応できるようにしておくんじゃ。2文字は仕方ないのぉ。諦めなさい」
おおっとー?諦めなさいとはまた直球ですね。少しは夢を持たせようとかないんでしょうか。きっとできる!いつかできる!がんばれ!っという感じにです。
......やばいです、慰めにしか聞こえません。これ言ってきてたら今頃わたし、ゴミを見る目でおじいちゃんのこと見てたかもしれません。
「はぁ......わかりました。なんとかやってみます。」
あとはやってみるしかないですね。瞬間移動が使えることはわかっているので、それで練習しましょうか。またおじいさんに手伝ってもらうことになってしまいますが。
とりあえず知りたいことはほとんど知れたと思います。おじいちゃんには感謝ですね。
「いろいろと、ありがとうございます」
「いいんじゃよ、孫の初の友達だしの」
「ぶはっ。ちょ、ちょっとおじいちゃん!やめてよ!」
シーナさんがお茶をぶちまけてます。そんなに恥ずかしかったんでしょうか。
わたしが初めての友達とか、すでに知ってますけど。
「あはは、わかります」
「わからないでよぉ!」
これはもう一押しですね。
「え......わたしが初めての友達じゃ不満なんだね...」
「え!そ、そんなことないよ!」
「そうなんだ......」
「そんなことないって!!ほのかは可愛いし!いい子だし!初めての友達がほのかでほんとによかっ......って!またからかってるんでしょ!」
にやにやしてるわたしをみてシーナさんが気づきました。
「そっか~。わたし可愛いのか。ありがとねシーナちゃん」
「シーナちゃん言うな!」
「仲が良くてよいのぉ」
「おじいちゃん...」
仲のよい家族でいいですね。シーナさんのおかあさんとおとうさんも見てみたいですね。ご存命なんでしょうか。聞いてみていいのでしょうか。......明日のわたしに任せます。
あ、
............そうですよ!忘れてました!わたしのおかあさんとおとうさん、心配してるかもしれません!どうしましょう......
・・・
まっ!どーせ帰れないので仕方ないですね。またいつか会えたら会いましょう。シーユーです。
「ほのかはこれからどうするんじゃ?」
「んー。そうですねぇ。どうしよう」
とりあえずシーナさんのおうちで厄介になってますが、成り行きでこうなってしまっただけです。ずっとお世話になるわけにもいきませんし。この先どうするか決めなくてはいけませんね。
わたし......
「わたしはもっといろんなことを知りたいです」
そうです。せっかく異世界にきたんです。なにか楽しいこと探していきましょう。
「なので、街に出ようと思います。街で暮らして、わたしにできることを探したいです」
「そうか。そうじゃの。それがいい」
おじいさんも名残惜しそうです。わたしも名残惜しいですが、その気持ちも異世界ならではな感じがします。現代ではスマホのせいですぐ連絡とれてしまいますし。これを機にスマホから卒業するのもいいでしょう。
......嘘ですよ。卒業させないでください。スマホの便利さが身に染みてわかりました......
《異世界 女子 生きるすべ》って検索したらなにがでてくるのでしょう。なにかのライトノベルの題名が出てきそうですね。やっぱりスマホいりません。
「そうはいっても、まだ出発はしないなんじゃろ?数日はゆっくりしていきなさい」
「はい!ありがとうございます!」
「そうですか......ほのか行っちゃうんですね.....」
「なにいってんの?シーナも行くんだよ?」
「......え?」
「え?わたし、この世界のこと右も左もわからないんだよ?そんな女の子ひとりでほっぽりだす気?ありえないでしょ」
「......なんで堂々としてるんですか」
「シーナ......ついて来て......くれるよね......?」
「......っ!ずるいですよそんなの」
「だめ?」
「...........................................................」
「いや沈黙長くない?不安になるんだけど!」
「......................................................................................................」
「ごめんなさいついてきてくださいお願いします」
「......はぁ。わかりました。ついていきますよ」
「や、やった!ありがとうシーナ!」
あ、危なかったです。少し、ええ少しだけ押し負けそうになりましたが、余裕で勝ちました。謝罪の姿勢も作戦のひとつです。やってやりました。
「おじいちゃん、わたしほのかについていくことにします。ちょっと家をあけますが、また帰ってきます」
「そうか、心置きなく行ってきなさい」
「いってらっしゃい、シーナ」
おじいさんとおばあさんの許可も得られたようです。ふ~ひと安心です。いまシーナさんを手放したら、またぼっちに逆戻りですからね。離しませんよ。絶対に離しません。ぼっち同士一緒にいましょう。死ぬまで......ね?
寂しすぎてヤンデレに目覚めそうになっているわたしです。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ほのかとシーナが眠った、その後、、、
「おじいさん、いいんですか?」
「そうじゃのぉ....」
「シーナの初めての友達だから甘くなるのは分かりますが。明確に契約違反になりますよ?」
「そうなるのぉ。」
....
「シーナは最初からオレンジに光ったと言ってましたよ。本来のオレンジと光り方が違いますよね」
「そうじゃ。わしがいじってオレンジに見せているだけじゃからの」
「今の時代にインビジブルが出現する意味が、分かっているのですか」
「わかっておる」
.......
「ばあさん。ばあさんのその目にはどう映っておるのじゃ?」
「....それを聞いたら、行動せざるを得なくなりますよ」
「そうか。なら聞かんでおこうかの。」
....
「ばあさんのときと同じじゃよ。わしはほのかを、新たなインビジブルに期待してしまっておるんじゃ。それがシーナと出会ったことも含めて、の。」
....
「それこそわたしのときと同じですよ。シーナは巻き込まれることになります」
「そうかそうか。ばあさんの見たものが実現してしまうかどうかは、これからのシーナ次第じゃの」
....
「そうですね。なら年寄りらしく見守りましょうか。なにかあったら」
「そのときはわしらで何とかするしかないの。手伝ってくれるんじゃろ?」
「ええ、もちろんですよ」
2人の長い夜は、ゆっくりと、流れていったのです。
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