後書きとその後(短編)
セーブポイント、あのキラキラ輝く水晶、夢と浪漫が詰まっていると、昔から思ってました。
ダンジョンの奥に佇む神秘的な、空中に浮かぶ結晶。
時にゲームタイトルのロゴを彩ったり、聖なるクリスタルとして物語上重要な役割を負ったり、主人公たちがパワーアップのために使う重要な石、それがセーブポイントです。
今回は、そのクリスタルに焦点をあて、作者の性癖と遊び心をこれでもかというほど詰め込んでみました。
お楽しみ頂けたでしょうか。
手抜きのつもりで書き始めたつもりが、本気になり、あと数話で終わらせるつもりが数十話の追加になりました。
また、仕事が忙しくなった時期とコロナがぶつかり、第五部の執筆は困難を極めました。
無事、予定していたところまで書けて良かったです。
今は、一つの物語を完結させたので、次の物語のプロットを練っているところです。
新作は今までの要素も踏襲しながらも、全く新しい方向の物語となる予定です。
まずはカクヨムで試験的に連載し、その後でアルファポリスにも掲載します。
話はセーブポイントに戻りますが、これから枢は今までと違う世界に戸惑いながら、アダマスの守護神として奮闘します。
そのエピソードの一部を少しお見せして、この物語を完結としたいと思います。
念願の人間の体に戻るまで、百年近くかかった。
思ったより時間がかかった。その間にアダマス王国が成立し、俺のクリスタルの体は教会に祀りあげられてしまった。
前のように、クリスタルと人間の体を統合するのは止めておく。
身動きできないクリスタルの体だが、クリスタルの時にだけ使えるスキルもあることが分かったからだ。
なので、必要な時だけクリスタルに戻って魔法を使うことにした。
人間の体は素晴らしい。
特に美味しいご飯が食べられるというのは、肉体あっての楽しみだ。
出歩けるようになったからには、外に行きたい。
俺は出掛けたくてウズウズしていた。
「残った災厄魔は、前の歴史の通りテナーが眠らせているのか?」
「そうだよ。君が光と闇と天の災厄を倒したから、災厄魔は半数に減って抑えやすくなった。地の災厄などは、特に大人しく眠りについたよ」
クロノアから災厄魔の話を聞く。
暫定親父殿なら「命を踏み壊してしまうくらいなら」と自分から眠りにつきそうだよな。
「よーし。聖域に行って、残りの災厄も精霊にしておくか」
せっかく人間の体に戻ったことだし、出歩きたい。
「カナメ様、どこへ行くんですか?!」
ちっ、もう見つかったか。
神官たちが駆けつけてくる。
「魔神ベルゼビュートが襲ってきたら、どうします! 国にいてください!」
ベルゼビュートこと黒崎は、前の歴史と同じように魔獣に転生し、聖域の北に一大勢力を築いた。
たまに侵攻をかけてくるが、適当に追い払っている。
「大丈夫、俺が不在の時に侵略してきたりしないって」
「カナメ様!」
神官のすがる手を振り切って、俺はリーシャンに乗せてもらって、聖域に赴いた。
「……ここか」
地の災厄が眠りについた場所は、滝になっていた。
岩山はよく見ると胴を丸めて眠る竜の姿をしている。長い年月をかけて岩に苔が生え、木や草花が生い茂り、上から滝が流れ落ちる景観が完成している。
「地の災厄を起こすの?」
元の竜神に戻ったリーシャンは、長い首を回して俺に聞いてくる。
俺は滝を見上げながら、リーシャンの背中から降りた。
「中身だけな」
「?」
魔法を使って、地の災厄の一部の岩を素材に、小さな竜を作った。
暫定親父殿の魂だけを、作った竜の体に移す。
クリスタルの体と人間の体を行き来しているうちに思い付いた魔法だ。
「ん……おや、ここは? カナメ? ついにワシを倒しに来たのか」
「久しぶりだな、暫定親父殿」
「覚悟はしている。どーんと父を倒すがいい。結婚式に呼ばれなかったのが、心残りだが」
「ちがうって。自分の体を確かめてみな」
「?」
寝ぼけていた親父殿は、自分の体が小さくなっていることに気づかなかったらしい。
「これは!」
ようやく小さな竜の姿になっていることに気付いた。
「その体なら、何かを壊したり、存在するだけで災厄になったりしない」
俺は、呆然としている暫定親父殿を両手で持ち上げた。
「行こう、親父殿。結婚式にはちゃんと呼んでやるけど、それはまだ先の話だ」
心菜とはまだ再会できてないしな。
「なんと! この体なら、人間の里に入ったり、鳥の雛に触ったりできるのだな!」
暫定親父殿は大喜びだ。
親孝行をするっていいもんだな。
異世界でダンジョンのセーブポイントになりました 空色蜻蛉 @25tonbo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます