高貴な血

森茶民 フドロジェクト 山岸

高貴な血筋


──備考──


夢魔とは、夢の中に顕れて人と性交を行うと言われる悪魔である。


夢魔には、男性型のインキュバスと、女性型のサキュバスがある。このインキュバスとサキュバスは、同一の存在だと言われている。

インキュバスは睡眠中の女性を襲い精液を注ぎ、妊娠させる。

サキュバスは睡眠中の男性を襲い精液を奪う。

なぜこの様な行動をするのか。

どの様に繁殖しているかは、一切が謎である。


夢魔は霧状の存在であり、歴戦の夢魔に成る程

性交したくなる何かが濃くなる。





──これは、夢魔の物語である──




ある国の貴い者が沢山住まう都の、その中でも高貴な者が住まう大きな建物に、夢魔が居た。


『フフ……警備する気があるのか、疑ってしまう様な奴ばかりだったな……』


 仄暗い石に囲まれた通路で、靄が蠢く


───


『もうスグで奴が寝ている部屋だな』


この国で最も貴い者が寝ている部屋に侵入した夢魔。

霧状だからなのか、隙間が少しでも有れば侵入できるようだ。


『フフフ……奪ってやる!』


この国で最も貴い者の胤を奪った夢魔は、高貴なる者が住まう城から脱出した。

……心なしか、侵入した時よりも警備が強化されていたように思う。



『さて……コレを、どれだけの奴に注げるかな?』


夢魔は、高貴なる者が住まう都の、薄暗く、粗末な木材の塊――家の様なモノが乱立している区域を、手頃な女性を探しながらフヨフヨとさまよっていた。

……月明かりに照らされた、高貴なる者が住まうであろう建物が見えていた。



『フフフ……よし、アイツにしよう』


夢魔は、自分と同じ様な匂いがする建物で寝ていた女性に覆い被さった。


『フフフフフ……あの傲慢なる、己の血脈を妙に気にする奴の胤を!コイツに注いでやる!』


────


その後も、物が沢山置いてある建物に住んでいた女性や、汗や垢、酒の匂いがする建物に住んでいた女性、人が沢山寝ている建物に居た女性を数人、道端に寝ていた女性幾人にも注ぎ……

今は月も見えなくなり、眩しい陽が天を闊歩していた。

……高貴なる者が住まうであろう建物も、高貴なる者が住まうであろう都を囲う大きな石も、見えなくなっていた。


『フフフ……人が居る所を探さなくては……

それにしても眩しいな……動くのが億劫だ』


夢魔は、燦々と輝く陽を避ける様に、樹木が乱立する場所に入り込んでいった。


────


陽が、血を流しながら墜ちている最中、

夢魔は人が沢山居ると感じる、深い窪みが巡らされている場所の、橋が架けてある所の近くに居た。


……橋の近くで武器を持って佇んでいた二人組が、人が沢山居る方へ怒声を上げ、武器を構え周りを警戒し始めた。


『!?……なぜバレた!』


夢魔は脱兎の如く 人が沢山居る場所から、去ってしまった。



────


幾数も幾数も陽が頂点を手に入れ、傲慢が仇に成ったのか紅の血を流し、月が天を駆け頂点を悠々と謳歌し、浮かれ過ぎたのか月が蒼の血を流し……シナリオ通りにしか進まない喜劇に飽々してきていたいたある日。

夢魔は樹木が乱立している場所を抜けようとしていた。

……樹木が乱立している場所の中では、ほとんどの人の集まりが叫び、夢魔が進路を変更していた。


『二度しか注げずか……何もしてないよりはマシか……』


それから何回も喜劇が繰り返され、「もういいよ……」とでも言う様に頂きを暗く染め、光が無く風が多い刻が続いた。


『億劫では無くなったのは良いが……風が多いな……』


草の林に身を隠す様にしながら、遅々と進んでいた。


そんなある時、人が沢山寝ている場所に辿り着いた。


『フフフ……』


数人の女性を孕ませて去っていった。


────


その後も同じ様に見つけ、注ぎ、去っていった。


『フフフフ……もう、すっからかんだぁ』


『フフフフフ……』


『次は何をしようかなぁ?』


夢魔独特の匂いと、独特な嗤い声を残して、どこかへ去って行った。



──続かない

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高貴な血 森茶民 フドロジェクト 山岸 @morityamin

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