第410話

「こうでもしないとあいつ倒せそうにないし。それになんか元々のノストガウリエラからメガシンカしてるっぽいし?」


『うむ、おそらくそうであろう。めが進化というものはまあなんとなく想像できるが、やつは自身を生み直す計画をしておったのだろうよ。あれはその結果生まれた不完全なノストガウリエラのような物。神を生む権能を継承できなかった分、その力が破壊の力に回っていると見える』


「お前ってさ、結構頭いいよね? 死ぬほど脳筋プレイする癖にそういうところだけ頭いいよね」


『さて、無駄話はそこまでにして、さっさと仕留めるぞ』


「おうよ」


 勇者を戦線から引き離したが、そう長いことおとなしくはしていないだろう。

 であれば、その隙にこっちをぶっ殺しておかないとかなり状況が悪くなる。

 

 モンテロッサの武具が光を纏い、小さくぶるりと震える。


「何それ知らない」


『出力を意図的に落として長時間使用できるようにしてみたのだ! どうだ凄いであろう!!!』


 こちらにどや顔を向けてきた瞬間、ノストガウリエラがこちらに突っ込んできた。

 登場したときは浮かんでたのに、今は別の意味で地に足がついていらっしゃるみたいで。


「ほい沼」


『からの、新技モンテロッサハリケーン!』


 俺の展開した沼に足をとられその場に膝をついたノストガウリエラ。

 しかし、その瞬間背中がぼこぼこと隆起し、皮膜を突き破って蛇の頭が無数に突き出してきた。

 それらはそのまま俺たちに向かってきたのだが、モンテロッサの新技――――といっても俺との闘いの最後に見せた光を拳に纏わせ、回転するアレの武器バージョンなわけだが、それによって蛇は粉みじんになり、ノストガウリエラも沼の圏外に吹き飛ばされながら全身の関節がぐちゃぐちゃになっている。

 

「互換罠」


 あのバカが回転を始めた瞬間にすでに投擲しておいた互換罠を張り付けたナイフと入れ替わり、転がってくるノストガウリエラの背後を取ることに成功した俺は目の前に龍狩りを呼び出した。


 吹き飛ばされた威力のまま龍狩りの刀身とかち合い、その体が上下に分かたれる。 

 

「『爆』」


 同時に爆炎陣を起動したのだが、なぜかモンテロッサまで爆炎陣を使ってやがり、俺の起こした爆発とは比べ物にならない威力の爆発がノストガウリエラを包み込んだ。

 まあ本命はこの次。


『健康一滴』


「乾坤一擲だばか。そんな怪しい健康食品みたいなのと一緒にすんな」


 口ではふざけているが、しかしモンテロッサ以上の戦闘能力を持つ古代種をここ迄一方的にやりこめられているのは、悔しいが俺とモンテロッサの息があっているからだろう。

 モンテロッサが投げた剣と槍はノストガウリエラの腹部と頭部をぶち抜いた瞬間、俺のペーストにより回収、モンテロッサに即時返還され、再度射出を繰り返す。

 この悪魔の戦法は、モンテロッサの武具がいまだに俺の所有物の認識のためにできる荒業だが、その効果はこれまで使用していたどの武器やアーティファクトよりも強力なものだ。

 何せ、神を殺すための武具残弾無限なんですもん。バイオのハザードでハンドガンからロケランが飛び出してるくらいぶっ壊れですよこれ。


「削り切れそうか?」


『奴の不死性は我の神殺しを超えておる。そう簡単には死んでくれないであろうな』


 確かにそうだ。モンテロッサの槍で貫かれたのなら普通の古代種は死ぬ。

 しかしノストガウリエラはそうではなかった。

 確かに尋常ではないほどのダメージを与えているのだが、しかし死んではいない。

 どういうからくりなのか思考を巡らせていたが、タイムリミットになってしまったようだ。

 

「させない!」


 何度目かになる射出された槍と剣を正面から弾き、さらにはそのままこちらに肉薄してくる勇者。

 その手には加護があふれかえり、物質化する領域まで達している。


「ディバイン・ブレイバー!」


 そう言いながら振り下ろされた一刀。

 加護から形成されるその圧倒的な物量は回避することがばかばかしくなるほどに巨大であった。

 

「というわけでモンちゃんお願い」


『任された。陣術:互換罠』


 まだ掌印も起動もくそカスレベルの速度だが、それだけ。モンテロッサの力であれば"目印を付けた対象"と自分の位置替えも可能であろう。


 当然入れ替わり先と言えば


「あでゅー神の王」


 ノストガウリエラは唐突に眼前に現れた光の柱を見上げ、脱力した。

 不完全な形で再誕してしまい、本能の赴くまま暴力を叩きつけるだけの存在になり果てていたノストガウリエラ。しかし、内包する力すべてを暴力のためだけに作り替え、それを意のまま操れるだけでもモンテロッサ以上の脅威となる。そんな怪物がすべての適応をあきらめ、本能でしか動かなかった体躯から力を抜き、すべての抵抗をあきらめて死を受け入れていた。

 

 声をあげることもなく、そのまま蒸発したノストガウリエラをみとって黙祷を捧げるような殊勝な生物はこの場にいない。

 俺とモンテロッサは位置替えに成功した瞬間にはもう次の攻撃を始めていた。  

 

 やつが攻撃を終える瞬間、モンテロッサの奇襲が始まりの勇者を襲った。

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