第404話
『懐かしいな父上。こうして父上と語り合うのはいつ振りか』
『我を父と呼ぶな。貴様のような"異端"は我が子ではない』
向かい合う怪物と怪物。
片や、古の神々との長きにわたる闘争の時代を作り出し、最後は敵対する神を殺しつくした化け物。
片や、自身より序列の高いものからも"戦えば必ず死ぬ"と言われ、種族ではなく"戦いという概念"の名を冠するに至った化け物。
天使、悪魔、龍、巨人、そういった種族ではなく、この化け物だけは"どの種族にも属さず""どの神をも殺すことができる"異端中の異端。
両者ともに、空前絶後の戦歴を持ち、そしてどちらも"人間に敗れた"過去を持つ。
遠いようで、どこか似ている二柱の化け物が悠長に会話をしているだけで、その存在感が醸し出す雰囲気は自然と周囲を威圧し、畏れの念を浮かばせる。
『うむ、であれば小難しい問答は止めにしてさっさと始めるとしようじゃないか"チチウエ"殿』
『―――貴様ッ!』
モンテロッサの甲冑のような顔がニヤリとゆがむと同時に、ノストガウリエラの光の剣がモンテロッサの檄とぶつかり合う。
『かっかっか! 気が早くて結構結構! こう見えて我もなかなかに腹に据えかねているんだよ。我から闘争を奪い、生きがいを奪い、命まで奪おうとした貴様の身勝手さになっ!!!』
光の剣を強引に腕力ではねのけ、すでに全開状態の浮遊する腕に握られたあまたの武具を構え、吠える。
振り払われた衝撃波だけで地面はめくれ上がり、次いでの咆哮によって発生した衝撃はが捲れた地面を再度平らに慣らしていく。
戦いに適した平面に再度形成された地面を描けるモンテロッサに、はじかれた衝撃で、数十メートル地面を滑ったノストガウリエラも、迎撃の姿勢を取るべく光の剣を無数に滞空させ、滞空する剣よりも二回りは大きい剣を両手に握った。
『モンテロッサァァァァア!』
『ノストガウリエラッ!!!!』
二柱の咆哮と同時に、武具がぶつかり合い、今までとは比にならない衝撃波が周囲を襲う。
しかし、ことはそれだけには収まらず、降り注ぐ光の剣を手に持った武具を用いて撃ち落としていくことによって発生した衝撃が断続的に周囲に
まき散らされる。
『おいおい神の王様、この程度で我を止められると本当に思っているのか?』
どこかの誰かのような、性格の悪い笑みを浮かべたモンテロッサに、本能的な恐怖を感じ取ったノストガウリエラ。
瞬時に何かを感じ取り、その場を飛びのこうとするが、しかし、すでにモンテロッサの術中に落ちていた。
『確か、こうだったな―――爆』
手印を作り、小さな声で唱えたモンテロッサ。
最後の覚醒を起こしたモンテロッサが手にした最強最悪の奇跡、それは古代種ではほぼありえない"学習"という力。
モンテロッサの生来の性格もあったのだろうが、しかし、常に他の生物を下に見ている彼らからすれば、"弱者が生き抜くための技術"など、強者が振るうべき力ではないと一蹴していただろう。
しかし、モンテロッサは違った。なぜなら彼はその"弱者が生き抜くための技術"によって敗れ去ったのだから。
突如顔の目の前を揺蕩っていた魔力の塊が爆発し、視界が奪われたノストガウリエラ。
戦いの神と称されるモンテロッサがそのような隙を逃すはずもなく、引き絞った檄がノストガウリエラの顔面があった場所を正確に貫いた。
確かな手ごたえ、確かな感触。
表皮を切り裂き、筋肉を断ち切り、頭蓋骨を突き抜け、脳みそをうがった。
だが、手から伝わる確かな感触と相反するいつぞや感じ取ったような悪寒がモンテロッサの体を後方に大きく引っ張る。
『さすがは神の王様ですなぁ。これしきで簡単にやられてはくれませんか』
確実な手ごたえの正体は、ノストガウリエラがたった今生み出した古代種。
頭部がはじけ飛んだその古代種を盾のように構えながらも、打ち出されたと錯覚するほどの速さで伸縮する光の剣がモンテロッサが先ほどまでいた場所にまで伸びていた。
『猪口才な』
『小細工に関しては我に一日の長があるみたいですな! ガハハハッ!』
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