第388話
「星穿ちの威力は統制協会の文献に残ってるが、南の大陸が二つに割れた原因と記載されてやがった。大陸を分断するほどの威力は流石に予想外だったのか当時の連中が“もしもの時”に備えて王都に封印したんだと」
上位10番までの古代種は神と呼ばれる。その下の30番までは王と呼ばれる。
30以上と以下には明確な隔たりが存在し、神と王にもまた明確な差が存在する。
“すべてを見てきた”と自称する晩年の時空の覇者が残した話によれば、神は一体で王を含める全ての古代種を殺せる力を持ってるという。
王も30以下の序列の古代種を全て殺せるほどの力を持っているそうだ。それ以下の序列持ちはまちまちだが、序列のある古代種とない古代種ではまた大きな隔たりが存在するという。
時間を遡り全てを見たという時空の覇者は千器とモンテロッサの戦いを見てこれを確信したという。
自身が相手にしていた魔王など、序列を持たない古代種でも相手にならないと。
そんな俺達からすりゃ桁違いの化け物である“王”を殺す事を想定し作られ、“強すぎたために封印”されたのが星穿ちである。
世界が滅亡の危機に貧した際に使用する、むしろ世界の危機に貧しない限りは使うことがないであろう兵器。
「そんな物が王都に……」
「よく考えろ、簡単な話だ。今の魔王の数倍やべえ連中が自由に出入りしてた国の、最も厳重な場所に保管されてたんだ。しかもこれだけ面倒なセキュリティをかけてまでな。これより安全な保管場所はねえだろ」
「たしかに……そうですね……」
まあそもそも、魔王の侵攻で追い詰められてた人類に古代種なんて雲の上の存在をどうにかできるはず無いんだが、そういう物をどうにかするのが本来統制協会の役目なんだがな。
「よし、ついたぞ」
漸く到着したのは周囲の扉より明らかに小さな扉。
蹴飛ばせば簡単に壊れてしまいそうな見た目に反して、組み込まれた術式は複雑過ぎて視認することも難しいレベルで組まれている。
試しにドアを開けようとしてみたが、俺ではどうにも開けられそうな気配がない。
「ティーニさんお願いしても良いか?」
話によればこの子が最後の鍵。“本当の第一王女”だという話だ。
給仕との逢瀬でできてしまったという話だが、そのまま存在を隠されながら生きてきた本当の第一子。
「わ、私がやっぱりそうなんですね……」
「はい。あなたが本当の王の第一子です。この扉は千器と第一王女以外が外から開けられない仕組みになっているらしいので、ここを開けられるのはあなただけです」
俺の言葉で覚悟を決めたのか、生唾を飲み込んだ後に真剣な表情になったティーニさん。
「警告。接近する気配があります」
「防衛は任せといけ。シーバス、アンタもこっちに加われや」
「任せてください」
俺は狭いこの空間でも取り回しができる短剣を両手に装備し、シーバスは槍を構え、接近する気配のある曲がり角に意識を向ける。
「申し訳ございません! 通路の確保に手間取ってしまい……」
しかし、そこに現れたのは先程のメイドたちと同じ格好をした女だった。
「申し遅れました。私は給仕のリアリーゼと申します」
「あぁ、アンタがリアリーゼさんか」
両手を上げながらこちらに近づいてくるリアリーゼさん。
メイドたちの話もあったので安心してシーバスも構えていた槍をおろした。
「茶室の扉は開きましたか?」
「あぁ、今開けるところだ」
「そうですか! 間に合ってよかった……」
そう言って胸をなでおろしたリアリーゼ。
同時に俺の今までの“経験”が、ブレアの“敵意の感知”が同時に反応を示した。
俺とブレアの間をくぐり抜け、手にしたナイフをティーニさんに振り下ろそうとしているリアリーゼ。
「これで千器様の活や―――ぶぃぇっ!?」
「えいっ」
しかし、リアリーゼのナイフが振り下ろされる前に、彼女の顔面にネヴィスさんがフルスイングで振り抜いた間接照明がぶち当たり、リアリーゼは間抜けな格好のまま勢いよくティーニさんとネヴィスさんの間も通り過ぎ、一昔前のロックンローラーみたいな格好のまま気を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます