第361話
食事を終えた俺達はハーシュのライブを行う予定の場所に向かっていった。
ただ、申し訳ないけどそのライブは決行されることはない。
彼女の歌姫としての実績作りは戦場ではなく、負傷者に対して行ってもらうつもりだ。
あの返答で俺も覚悟を決めた。これから先のキーマンになる彼女をこれ以上危険な目に合わせるわけにはいかない。
本当に必要な時に彼女が“使えない”状態になっていたら目も当てられない。
だからこそ彼女にはここでは我慢を強いるつもりだ。
その代わり、彼女の目的である“戦争を止める”ことと“歌姫”になることを全力サポートする。
ローズには別の任務を押し付け、途中で別行動に出た。
そこで俺とハーシュだけで前線に向かったのだが―――
「あれ、勇者じゃん」
そう、あの物騒な名前の勇者と何故か脇役ホモ野郎がいた。
勇者の前には響を彷彿とさせるレベルのバインバインの姉ちゃんがいるんだが、この姉ちゃんなかなか強そうだ。
強さのレベルで言えばチョコチの2/3くらいか。
化け物の群れの中で育ったチョコチの2/3であれば普通の英雄じゃ片手でポイだろう。
「え、何知り合い?」
俺の声を聞いてかハーシュが背後から顔を出してくる。
ちょっとかわいい。
ホモ野郎とは無関係をどうしても貫きたいわけだが、前回の一件で勇者君にはなかなか泥を被せてしまったようだし、その後も俺の周りのことを心配してくれてたみたいなので勇者君との関係は割と良好なんじゃないかなと思う。
ブレアの一件で俺に対して莫大な借金もあるわけだし。
「おう、親友だぜ!」
「あんたそもそも友達いたんだ」
まさかの即レスで会心の一撃が飛んできた。
俺ってそんな友達いないように見えるのかな。かなり悲しいんだけど。
というかこのレベルの姉ちゃんとあの勇者君がバトればさすがのハーシュも前線で歌うのがどれだけ危険なのかわかるだろう。
「あ、気にしないで始めちゃっていいよ。俺のことはあれ、天井のシミくらいに思ってくれればいいからさ」
ということで早速観戦モードに突入。
ポップコーンとコーラ、後完全にネタで3Dメガネを装備。
混乱気味のハーシュにも同じ装備をさせ、取り出したソファーに腰掛ける。
久しぶりに楽しい見世物が見られると思ってテンション上がってたのになんかボソボソ言ってたバインバイン姉ちゃんが急に「興が削がれた」とか言って剣を収めちまった。
さっき俺に何回か殺気を向けてこようとしてたので先制した時にわかったんだけど、あいつはおそらくラングスだ。
あの引きこもり戦闘狂集団がついに里の外に出てきたのか。
俺のいない間に世界も変わったんだな当たり前だけど。
そこから暇そうにしてたホモ野郎にここにいる連中の装備強化パックを渡してやった。
それとこれから先は戦力を温存しておけとも言った。
勇者君の方はほぼ俺の奴隷同然なので大人しく従ったが、あのラングスの女の方は俺にめちゃくちゃ殺気を向けてくる。
まあラングスの連中からは相当に恨みを買ってるしなぁそのうちバトル挑まれたら適当に言い逃げしてやろう。
そんなことを考えながら俺はローズに連絡を飛ばす。
「そろそろ始めて良いぞ」
「はぁ……わかりましたわ」
未だに納得はできていないというオーラマシマシでローズが声を出すのと同時に、戦いの起こっているであろう場所の殆どで弾丸に封入されていた魔法や個性が炸裂したのだ。
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