第359話

 俺がローズに持たせたものは爆弾。

 爆弾と言ってもその形状は弾丸だが。

 

 そう、俺がたまに使う事があるあの弾丸だ。

 あの弾丸は魔力がない俺のポンコツボディでも使えるように周囲の魔力を使って充電される。


 俺自身に魔力はないが、魔力を操作する方法ならあるため実質“ある”という状態なのだが、本質的には“ない”というのもかなり重要になってくる。


 その理由が今俺の目の前にある。


「ロリババアの言ったことは本当だったな」

 

 手にしたのは一振りの剣。神剣と同様に構造の一切が解析不可能な代物であり、俺のメインウェポンの一つだ。


 ぶっちゃけ最悪との戦いでは役立たずで、大抵の英雄にも使い道がないピーキーな性能だが、ごく一部の敵に関してだけ言えば“完勝も可能”になるほどの性能を持っている。


 例えばキャロンとこの装備で戦えば俺は間違いなくあいつに手も足も出させず勝利することができる。


 つまりこれは“魔を扱う連中の天敵”となる性能を持っているのだ。

 神剣が全ての“加護”を破壊するのであれば、この剣は全ての魔を破壊することができる。


 そんなぶっ壊れ性能の理由は簡単だ。この剣の素材は古代種なのだ。

 それもただの古代種ではない。人類史最大の謎と言われている三柱の神の神滅。


 序列1位、神王ノスト・ガウリエラ。

 序列2位、天神レジェドリアム。

 序列3位、悪神ガルドリアム。


 この三柱の神の神滅は未だに解明されていない人類史の謎だった。

 俺が星の記憶で調べようと、神王ノスト・ガウリエラの死の真相だけは一切わからなかったが、しかし、他の二柱の死因は違う。


 奴らは大きな戦いの中で殺し合って、そして相打ちになったのだ。

 あの二柱は序列こそ上下だが、しかしそもそも対になる存在として生み出されたためその力は拮抗していたのだろう。

 

 そして、その二柱の“核”が使われたのがこの剣なのだ。

 

 核とは神の称号を持つ古代種のみに存在する“物質”であり、モンテロッサで言うところの武器だな。

 通常の古代種はうまく殺さない限りは跡形もなく消え去ってしまう。

 しかし神は消滅せず、一部が残る。それが核……なんだとか。


 俺も神と戦ったのはモンテロッサだけだ。詳しいことはわからないが巨人の末裔である響の一族に口伝として伝わっていた。


 おそらくこの時代でそれを知っているのはもう俺一人何じゃないだろうか。


「それにしても、まさかここに隠してたとは思わなかったぜ。嫌な思い出のスライドショーが始まってゲロぶちまけそうだわ」


 俺が今いるのは、この世界に初めて転移してきた際に狩りに出されて遭難し、奴隷商に捕まった後、イカレ科学者に魔物と繁殖実験をさせられそうになった場所のすぐ近く。


 つまるところ、龍脈の中だ。


 キャロンとの思い出もあるし、龍脈の守護者との泥臭い戦いの記憶もあるし、しかし、初めて人を殺したのもここで、俺の転生人生が苦難の連続になる切っ掛けの場所。


 随分と粋なところに隠してくれるじゃねえか。確かに神剣の数倍普通のやつの手に渡るとやばい。

 神剣なら触ったやつが勝手に爆死するだけだが、この剣を使えば奴隷契約の一方的な破棄、各種契約魔法の完全無効化、戦闘では殆どの魔法使い相手に完封できる。

 こんなものが出回ってたらたしかにすぐに名前が出てくるはずだ。


 ただ、俺の中でこいつはそこまで優先度が高いわけじゃない。

 用途が限られすぎていることと、マッカランやその他メンバーがいればどうとでもできる効果だからだ。


 なくなってたらなくなってたで別に良かったんだが、今はそういう状況ではない。

 今の状況においてこれは“必須”装備になる。

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