第345話
その後お決まりの展開にはなったけど、なんとか金髪ロンゲさんから話がを聞くことができた。
ロンゲさんの名前はカナディアン・クラブさんというらしい。
仲のいい人からはカナディと呼ばれているんだとか……どうでもいいんだけど。
クラブさんの話では今回の内乱では旧王派と新王派にランバージャックが分断されているという。
旧王派は現在の国王でもあるウェルシュ・ランバージャックを旗印にし、新王派はランバージャック第一王女であるボウモア・ランバージャックを旗印に現在の圧政を退けることをお題目に戦っているとのことだ。
既得権益を貪りたい旧王派と、革命を求める新王派の争い。そして俺たちは新王派に与することになる。
まあそもそもスコシアさんが旧王派に加担するはずないんだけどね。
「現状では聖十字騎士団と黒鉄騎士団が戦争参加を拒んでいることからなんとか我々の優勢になっておりますが、先日発表された“第四の騎士団”が皆手練揃いで、このままではすぐに情勢をひっくり返されてしまうでしょう。それを防ぐためにもスコシア様や勇者の皆様をお呼びした次第です」
「なるほど、俺たちはその第四の騎士団? って連中と戦えばいいんですね?」
「……そうしていただけると一番なのですが、しかし……」
どうにも歯切れの悪いクラブさんが次の言葉を発するよりも早く、スコシアさんが口を開いた。
「―――その第四の騎士団の名前ってのがな、“勇群騎士団”って名前なんだよ」
「それってまさか……」
「あぁ、全員勇者で構成された騎士団なんだとか。それでもお前、やれるのか?」
……まさか王都に残っていた勇者たちが……
戦えるのか、仲間と、学校の友達と。
あのあの王女のことだからおそらく洗脳かなにかされているんじゃないかとも思う。
けど、もし違ったら、いや違くなくても結局は……
「……やれます……やらないともっと多くの人が犠牲になるんなら俺は……」
「ならいい。だけど無理なら私が先に蹴散らしてやる。いいな」
スコシアさんにしては珍しく気を使ってくれているようだ。
「獲物は早もの勝ちだ」
というわけでもないかも?
純粋に勇者と戦いたいだけかもしれないなこれ。
その後の話し合いの内容は俺たちには聞かされることはなく、俺を含む勇者組はここで退出を促された。
流石に作戦を俺たちみたいに実績も信頼もないやつに聞かせるわけには行かないのだろう。
俺でもそうするし、そのことについては問題ないのだが、退出を促され、会議室のようなところを出るとすぐ給仕の女性に話しかけられ、その際に夜伽の話が上がった。
これには坂下や巣鴨さんが難色を示した。
かく言う俺もそうだ。
給仕の女性たちは数名おり、その中から好きな女性を選ぶことができると言われたのだが、その全員が奴隷だったのだ。
正直この奴隷という制度を俺はあまり良く思っていない。大塚もそういえば奴隷を保有していたが、同じ日本で育った感覚としてその辺りどうなんだとついつい考えてしまう。
給仕の女性たちは命じられているだけなので彼女たちに強く当たっても意味がないことなどわかりきっているのでやんわりとお誘いを断り、俺たちは割り当てられた部屋に移動した。
「もう何なのこれ! 結局やってること何も変わんないじゃん!」
「いや、そうでもないと思うな。俺としては彼女たちはそれなりに身なりも綺麗だったし人としての尊厳見たいなものを損なわれているような感覚はしなかった」
「そうですね。私もそれは思いました。ランバージャック城にいたときに面倒を見てくれてた人たちみたいになんだか言いようのない焦りや怯えみたいなものはあまり感じられませんでしたし」
ソファーに身を投げるなり険しい表情の坂下と、顎に手をあてランバージャック城でのことを思い出しながら話す巣鴨さん。
二人の意見はぶつかっているように見えるが、巣鴨さんの話を聞いた坂下は思いの外素直に「あっ確かに」等と言い、すぐにいつもの表情に戻った。
こういう素直さが彼女の武器だと思う。俺だったら意地になって粗探しとかしそうだし。
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