叛逆再び

第314話

「やっとかよ……うっわーケツいてえ……」


『だから言ったじゃねえか俺様がケツ毛育毛魔法かけてやるって』


「は? 馬鹿なの? 俺のプリティヒップが世界から失われたら世界各地で女たちがデモとストライキとアルゴリズム体操が始まんぞ」


『テメエのケツ一つに世界巻き込むんじゃねえってんだよ』


「はぁ、学がねえな! ケツってのは割れてるから二つなんだよ。一つじゃないの。わかる?」


『え、まじ? 俺様知らなかったんだが!』


「適当に決まってんだろバーカ。だからテメエはいつまでたってもトイレットペーパー以下なんだよ」


『テメエこそ一体いつまで童貞拗らせるつもりなんだよ! そろそろ魔法使いとか賢者じゃなくて勇者(笑)に転生すんじゃねえの?』


「うわ、それいやだわ……」


『言ってて思ったんだがよ、俺様も自分のイチモツを勇者(笑)とか言われたら泣くわ』


 チリ紙もどきと生産性のかけらもない会話をしながら街道を歩いて行く。


 最寄りの町から乗合馬車に乗ることに成功したんだが、そこで案の定不幸スキルを発揮しやがって、馬車が脱輪して、そこに盗賊が現れて、護衛連中と何とかぶっ飛ばしたと思ったら、今度はどっかの貴族の娘がドラゴンに襲われてて、助けたらドラゴンを差し向けたのは俺とか言い出して追い掛け回されるし、その後稀少な魔物が怪我していやがったから治療してやったら腕にかみつかれて逃げられるし、なんか勇者パーティーに所属してたっておっさんが餓死寸前で倒れてたから水と食べ物を恵んでやったら盗賊にジョブチェンジして襲い掛かってきたからぶちのめして、魔力暴走起こしてた捨て子の女の子を見つけて、魔力の制御方法教えてやったら捨てた家族に復讐するとか言い出して、笑顔で送り出そうとしたら「腕試しに、まずはあなたを殺すわね!」とか言ってきたので男女平等、年齢でも差別しないユーリさんの鉄拳制裁でぶちのめして、魔王の娘とか言う痴女が近寄ってきたので、ブスだったからぶちのめして、空から女の子が降ってきたので、ブスだったからぶちのめして、泉で水飲んでたら中から金と銀の斧持ったクレイジー女が出てきたのでぶちのめして、竹の中に隠れていやがったブスをぶちのめして、魔王にさらわれたとか言うブスをぶちのめして、魔王軍四天王とかふざけた名刺渡して来て、道聞いてきた野郎をぶちのめして、あとその他いろいろぶちのめしてたら馬車に置いて行かれたのでとりあえず鶴の姿から人間に化けたブスをぶちのめしたりしてた。


「なんかすげー疲れたのって俺だけ?」


「後半殆どぶちのめしてただけじゃねえか! やってること通り魔となんも変わんねえよ!」


『ってかお前誰?』


「アンタらにぶちのめされた桃太郎だよ!」


「あぁ、おたくあの桃の中に隠れてたクレイジーボーイ? ってかなんでついて来てんの?」


「そ、それは……」


「ってかその前に服着てくれませんかね? これ一応全年齢対象だから。そんな四六時中マッパだとPTAからクレーム来るから」


「テメエらに破かれたんだろうが!!! だから変えの服請求するためについて来てんだよ!!!」


「え、何この人急に怒り始めたんですけど」


『奥さん! これあれよあれ! ニュースで見たことあるわ! 確かキレる十代ってやつ……』


「あぁ、これが噂の……」


「十代じゃねえよ! 生後0日だよ! なんでこんなハードモードな人生なんだよ! 生まれた瞬間ぼこぼこにされて服破り捨てられて森の中に武器も持たず放置とか“無理ゲー”すぎるでしょこれ!!!」


「あ、お前転生者か。なるほど。じゃあまあ、頑張れよ」


「あ、どうも……ってなるかァァァア!!! 服!! 服をよこせよ!!!」


「いやーね―奥さん。あの人追剥? それとも性犯罪者? 服を脱げなんて言ってきたわよ?」


『こうなったらもう燃やし尽くしてしまいましょ! 大丈夫、アタシの火力なら灰も残さないわ!』


「でも時間操作系の個性で探されると面倒だから、とりあえず個人の特定できないように歯全部折っとく?」


『あ、それあり』


 そんな話をしてたからか、桃から生まれた変質者は葉っぱの装備だけで森の中に戻っていった。


「なんかすごい前半に畳みかけてきてもうお腹いっぱいなんだが」


『激しく同意』




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