第275話 現場からは以上です!
◇ ◇ ◇
現場に到着したユーリさんです!
何と現場にはデッキブラシの化け物が横たわって泣きながら「かみしゃま~」とかバブってる惨状が広がっております!
これはハッキリ言って目に毒です! いや本当に。
仕方がないので俺は一つの弾丸を握り、その拳をデッキブラシに振り下ろした。
「ザオ〇クゥゥゥゥゥゥゥゥゥウーーーーッ!!!!」
「―――ぶっふぉッ!? あ、あんたなにしやが……んだ…………」
いきり立って飛び起きたデッキブラシが俺に掴みかかろうとして伸ばした手を見つめ、驚愕の表情を浮かべた。
まあ、俺も相当な犠牲を払って修理してやったんだから本来もっと感謝してくれてもいいんだけどね。それに俺って男の事助ける趣味とか本来ないわけだし。
だけど、これだけは言ってやりたかった。言ってやらなきゃ気が済まなかった。
「かっけーよあんた。だから死ぬにはもったいねえ。それこそ、あんなのに殺されるなんてな」
「……ははっ、俺の勘は……どうやら外れちまってたみたいだ……あぁ、こいつは……“嬉しい誤算”だ……」
またしてもぶっさいくな泣き顔を晒しながら俺に視線を送ってくるデッキブラシ。
恐らくだけど、今ので何をしたかバレちゃったんだろうね。
知ってる人はまあ知ってるわけだし。
「助かったよ。あんたらが時間稼ぎしてくれたおかげで最低限の準備は出来た」
「やっぱあんた……」
「んなこといいからさ、後ろの二人助けてやれば? 火力的には問題ないけど如何せん無駄が多すぎるからさ。アンタが指示出して初めてあの二人は“怖い”って思えるレベルになるわけだし」
確かに単純な速度、火力、万能さは脅威だけど、所詮はそれだけ。
この世界で厄介なのはちんけな個性を捻って捻って使ってくるような連中だ。
俺自身もその例に漏れない訳だけど、俺の場合は元がカス以下だからそれやってようやくカスの仲間入りって感じだしね。
「んじゃバトンは受け取ったぜ」
「あぁ、申し訳ねえが……アイツは俺の手に負えるような存在じゃなかった……」
「気にすんな。こういうのは慣れだからね。それに俺の手にだって全然負えないからね? それでも何とかしなきゃいけないから来たわけだけど」
片手に神剣。反対の手にはクロスボウ。いつも通りのスタイルで、しかし、今度は森王の時のように全力の半分の力も出せない状態の敵ではなく、万全の状態の古代種を相手にしなくてはならない。
だからこそ、こちらも早々に切り札を切ろうと思う。
「————五分」
取り出した紫結晶を砕き、空中に散布し、一気に駆け出す。
こちらの接近に敏感に反応した序列を持たない古代種―――陸鮫のルカン。
古代種は基本的に俺の存在を感知することができる。古代種やら悪魔やら色んな野郎どもの呪いが関係してるらしいが、それでも詳細な場所はわからない。
わかるのは近くにいる。という事だけ。だからこそ、初手が重要だ。
接近に気が付かれた時点で俺は足を止め、その場で神剣を構えた。
「————フッ!!」
それとほぼ同時に飛んできた硬質化した砂の塊を切り取りながら剣を振るう。
「おらどうしたフカヒレ。そんなんじゃスープにもしてやらねえぞ」
人間と大差ない……いや逆か。人間は古代種と大差のない思考能力を持つ生き物だ。
だからこそ、今の行動が活きてくる。
『―――人の身でありながら我が砂弾を斬り飛ばすか』
地面を振るわせるような低い声がフカヒレの化け物から放たれた。
それを聞いた瞬間、頬が吊り上がりそうになるのを必死にこらえるのが大変だったね。
「ジャンジャン打って来ても良いよ? まあ無駄だと思うけど」
『面白い。その“遊び”乗ってやろう』
瞬間、周囲の砂が一斉に浮かび上がり、球体の形をとった。
その総数何と……いや数えんのやめよう。頭が痛くなりそうだ。
『では、初めようか。暇つぶしを』
「へいへい。ピッチャービビってるぅ!」
飛来する砂の弾丸。一つならまだどうにかなったが、これが複数になると“目視”してからじゃどうしようもない。
だからこそ、俺の
――――来たッ!
「―――全選択、カット」
とりあえずこれで一つ目の勝負は俺の勝ちだ。
瞬間、背後のミノカサゴ共に向けて“ペースト”した砂の塊が一撃で化け物共の急所を粉砕していく。
「さて、大事なお仲間いなくなっちゃったね。あ、でも俺もボッチだから俺達ボッチ仲間じゃん! ボッチなのに仲間とかこれ如何に」
俺の貧弱な攻撃じゃ後ろの連中はどうにもできない。それにあの三人組の限界も近かった。だからこそ誘った遊び。
案の定それが成功し、背後の殲滅は完了。それだけではなく、今の砂の弾丸のおおよその威力も把握できた。
――――これは当たったら死ぬ奴だ。
ほんと、なんちゅーもんを連射してくれてるんですかコノヤロー。
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