第229話 投球練習兼拷問
「ユーリファイヤー!」
隠し部屋のドアに、可燃性オイルを掛けて火を付けたボーリングの玉をぶん投げて突破する。
中からは、え? という呆けた声が聞こえるが、そんな物お構いなしに進んで行くと、中には、顔に斜めの刀傷がある女がいた。
恰好も外の連中よりもしっかりしていて、体からあふれる加護も常人のそれではない。
間違いなく英雄の域に達している。だけど、それだけだ。
それ以外に特に警戒する何かを持っている気配はないし、しっかりと俺の倒せる範囲内の敵である。
だからこそ即座に斬りかかってきても………
「爆針」
一張羅の過付加によって陣術の効果を単体で宿した針が女に刺さり、爆破した。
今までのように針に陣術を刻む必要などなく、陣術その物を針に付加することで発動までのタイムラグを極限まで減らせる。
そればかりか、ひとたび刺されば、刺された相手の魔力を使って陣術を起動する凶悪な武器に早変わりと言う訳だ。
「ぐっ!」
苦悶の表情を浮かべ、爆破された肩を抑えながら後退した女。その足さばきや間合いの取り方を見ても、他の連中とは比にならない練度だ。
「てめえ俺達が誰だかわかってやってんのか? 俺達のバックにゃ山神教が付いてんだぞ」
「知っててやってる。それにお前らが巫女を誘拐したことも知ってる。だから俺はここに来たわけ。あぁ、一つ追加で言えば、今山神教の連中は森王復活のために全員出払ってるから助けは来ないぜ?」
俺とシグナトリーがあれだけ派手に戦っても誰も来なかった理由がそれだ。
シグナトリーという超巨大戦力を残しておけばまず間違いなく山神教の総本山の防衛は安泰、普通はそう考える。
しかし、アイツは間違いなくこのタイミングで俺が一張羅を取りに来ることを予想し、俺だけを警戒していた。
そもそもあのレベルの英雄であれば警戒などしていなくても並み以上の敵であろうと一蹴できるから。
「つまり、俺がここにたどり着いた時点で積みなの」
「けっ! テメエみてえな雑魚一人で何ができるってんだ。虚勢張るならもっとましなこと言いやがれってんだよ!」
いきり立って突っ込んでくる女。しかしユーリさんは男女平等主義者なのだっ!!!
「食らえ!!! 必殺――――愛と情熱の男女平等パンチッ!!!!」
駆け寄ってくる女にタイミングを合わせて拳を引き絞りながら大声で叫べば、一瞬だけ視線が俺の拳に動いたのが分かる。
――――ここだ。
「ふゅげっ!?」
俺の一挙手一投足に警戒をしてしまう練度の高さがあだとなった。と言うか、こいつはしばらく戦いを経験していないのなんかすぐにわかる。
おおかた部下を使ってあまい汁ばっかり吸ってきたんだろう。
羨ましいじゃねえかチクショウ。
まあだから俺が最初に投げ込んだボーリング玉から完全に警戒を解いてくれたわけだけど。
と言うか、さすがのおじさんも無駄にあんな道具を取り出しませんって~。いや本気で。
はじけ飛んだボーリング玉。そしてその中に仕込まれていた小さい金属片が女の全身に突き刺さり、女はその場で足を止めた。
さぁて、では皆さまお待ちかねのお時間だ。俺が女の子をひーひー言わせて情報を引き出す名シーンだ。後世に残してもいいくらいだろう。
「拘束しろ」
叡智の書が魔法陣を組み上げ、その魔法陣からいくつもの鎖が飛び出し女の全身を拘束した。
淡い紫の光を放つこの鎖、かつてカリラの力を封じ込めるために一役買っていた鎖でもある。
「これに拘束されるとな、エロゲのように力が出せなくなるんだ。そして君には選択肢をあげよう。一つ、この食うだけでハッピーになれるボンバイェイを食う。一つ、食うだけでハッピーになれる自白剤入りのボンバイェイを食べる。一つ。俺に毎朝味噌汁を作る。そして永久に二人で愛を誓う。さあ選べ」
「くっ! 卑怯だぞ! そんなの選べるわけがないだろ! 何を選んでも地獄しかねえじゃねえか」
「おいちょっと待てこら! 明らかに一つハッピーエンドになれる選択肢があんだろうが!!!! テメエ俺のことなんだと思ってやがんだ!!!」
「うるせぇえ!!! テメエと愛を誓うくれえだったらそのクソ怪しい団子喰ってやらあ!!!」
あら、なんて男前なお嬢さんなのかしら。
ちなみに察しの良い人は気が付いているだろうが、こいつは以前ロリババアに喰わせて失神したオイニーがゴイスーのボンバイェイだ。
ってか俺と愛を誓い合うよりこれ食うってすっげー傷つくんですけど。
「―――そいっ!!!!」
全身全霊のサブマリン投法で女の顔面にボンバイェイを叩きつけてやったぜ。
ぶじゅっ! っととてもマズそうな効果音と共に女は解放された臭いにその場で失神して失禁して白目をむいて仕舞いにはゲロまで吐きやがった。
『俺様は未だかつてテメエみてえなクズを見たことがねえ………』
「大丈夫、世の中下には下がいるって言葉もあるから、きっと俺より下は沢山いる。とりあえず放水で起こしてあげて。ついでにおもらしも綺麗にしてあげようか」
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