第227話 北風と太陽光線
おじさんは思うのだ。どうしてこの世界だけに留まらず、他の異世界物なんかでも山賊や盗賊は洞窟にこもりたがるのか。
そしてどうしてその世界の主人公共は正々堂々と洞窟の中にバカ正直に入っていってしまうのか。
要するにね、洞窟の外からちょっとあれな煙を洞窟の中に流し込めば浅いところのやつらは駆逐できるのだ。蜂の巣を駆除する時と似てるね。
目の前でキャンプファイヤーになっている木材。これは昔流行った魔薬の原材料であり、これを燻して吸引することで最高にハイってやつになれると好評の木材と、超好戦的になれると噂のシュテルクスト産の軍部が愛用していた興奮剤の原材料だ。
それをファイヤーして俺の背後に出した旋風機というアーティファクトで煙を洞窟内に流し込んでいく。
面白い事に、ホルモンの関係だか何だかでこれが女性にはほとんど効果がないというのもまたいいところだ。
「今度から俺のことは燻し銀のユーリと呼ぶがいい」
『ぎゃはははははっ! んだそれくそだせえじゃねえか! 大人しく燻製肉のユゥリィルムとかにしておけっての!』
「黙れトイレットペーパー。テメエも燻製してやろうか」
『あぁ? 俺様がいなけりゃあの女に簡単に殺されてた野郎が随分とでけえ口を叩きやがるじゃねえか? あぁ? 俺様の偉大さをもっと噛み締めて崇めろってんだよ!』
「ここにな、馬糞って素敵なアイテムがあってな、これをな、今からどうするとおもう?」
『俺達のコンビは最高だよな! 俺達は二人で一つ! これからも仲良くやろうぜ相棒!』
はぁ、この喋るトイレットペーパー死ねばいいのに。
「はいはい。さてと、そろそろ頃合いかね」
俺達が無駄話をしている間に洞窟の中からそれはそれは楽しそうな声が聞こえてきた。
愉快な笑い声に断末魔、楽しそうな声に断末魔、そして歓喜の叫びに断末魔に断末魔。いやぁ随分と愉快なぱーちーが始まってるみたいですやん。
そもそも山賊や盗賊なんてのは圧倒的なリーダーがいなけりゃ基本的に私利私欲で動く連中が利害関係の一致で集まっているようなもんだ。だからちょいと刺激してやりゃ意外と脆く崩れる。
逆に傭兵共の場合はこれに含まれないから厄介なんだよね。それ言ったら敗戦国の傭兵共が盗賊に落ちたってのが一番最悪だけど。
「じゃおじさんもパーチーに参加してきますかね」
右手に剣、左手に銃を装備し、マスクを取っ払った俺はそのまま洞窟内に入っていく。
マスクをつけてた理由は簡単で、何回もウイルスバスターをするのが面倒だったってだけだ。
充満してた空気も旋風機が吹き飛ばしてくれたので安心安全洞窟の旅が始まるって訳よ。
「お邪魔しマンモス」
目の前にいた笑顔の素敵なお兄さんを三枚に下ろしながら洞窟を進んで行く。
洞窟内の壁を触り、想像以上に硬い土でできていることが分かる。そこから、この洞窟がそれなりの深さがあってもおかしくはないという仮説を立ててみたり。
まあでも結局やることは同じなんだけどね。
とりあえず涎を垂れ流しながら徘徊しているパーリーピーポーを一人糸で捕まえ、複製しておいた奴隷紋をプレゼントしておいた。
ほら、パーリーピーポーってタトゥーとか好きそうじゃん? マジで勝手な偏見だけど。
「雑魚は殺せ。使えそうなやつは連れて来て」
命令はこれだけ。既に自我が崩壊寸前のところまで行ってるからこそ難しい命令は出さない。
どうせ連れてくるやつも既に“壊れてる”だろうしね。
『にしても、えげつねえことしやがるな。こいつら助かってももうまともな生活送れねえぜ?』
「いや、どうせ死ぬんだからその後のことなんか考えても意味ないでしょ」
この規模になればさすがにあの程度の魔薬を自己治癒する程度の英雄はいるだろう。だからこそここいらで助っ人を呼ぼうと思う訳です。
さてさて、話しは唐突に変わるわけだが、俺が散々使ってきた紫結晶。あれって本当は討伐ランク150以上の魔物の体内で生成される結晶なんだけど、今の時代では“何故か”討伐ランク150以上のやつの体内にそれがない事が結構多いわけですよ。
だから正直めっちゃ困った。死ぬ程困った。紫結晶は俺の個性を最大限に活用するために絶対に必要な物だし、それに仲間を召喚する時にも重要な物になる。
当時は様々な魔物から採取することができたおかげでそれなりに困らずマッカランやらの秘密兵器を投入出来たわけだけど、今回はなぜかそれが殆ど見当たらない。
じゃあどうするか。答えは簡単だ。
俺の大親友であり、今までに最も多くの紫結晶を提供してくれたリアブル君を適当に狩り続ければいい。
定期的に星の記憶に行ってた理由も実はそれが少しだけ関係している。
「と言う訳で、ミルズ、出てこいや!」
召喚の為に紫結晶が必要だし、一対一でそんな事をする暇なんか間違いなくないから使えないんだけど、それでもこういた場合はとても有効だったりする。
チーズハットグを咥え、だらーんと伸びたチーズを啜る様に食べているおっさんが瞬く間に目の前に召喚された。
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