回想再び

第211話 過去編って正直あんまり好きじゃない

 カリラを元に戻し、拠点であるランバージャックのビターバレーに戻った俺とカリラ、たまき、ミルズそして“チョコチ”。


 そろそろ本格的に当初の目的のために動き始めないといけないのだが、その前に骨休めは大事だろうという事で、案の定童亭に行き、カウンターに横並びで酒を飲み始めていた。


「ところで千器よ。貴様どうやって生き残ったのじゃ?」


「ところでババアよ。どうして呼んでもいねえ奴がナチュラルに会話に参加してやがるんだ?」


 再び俺に噛み付こうとしてきたので懐に手を突っ込んだんだが、それを見たババアは即座に座り直し、優雅にワイングラスに注がれたげろ甘いカクテルを喉に流し込んだ。


「ふふふ、我ほどになれば貴様の行動を見破るなど造作もないのじゃ」


「俺の事見失って、必死こいて犬みたいに穴掘りしてたらしいじゃん? そこんとこどーなの?」


「ぬぐっ!? あの小僧が要らぬことを言いおったのか!!! ………ま、まあ良いわ……それにしてもあの絶望的な状況でどうやって生き残ったんじゃ。その後の消息がつかめんかったことも気がかりじゃったし、ブックマークまで無効になってたのはさすがに肝を冷やしてしもうたぞ?」


「あぁ、ちょっと“星の記憶”にいってたからな。さすがのお前でもこの世界じゃないところまでは見えないだろ」


「おぉ! ユーリ殿、再びあの聖地に赴いたのであるか! ぜひ今夜はその話を聞かせてほしいのである!」


「いや~ほんっと大変だったっすよ………この人めちゃくちゃとか通り越してるっすから………」


 呆れたように肩を落としたたまきがそう言いながら、ジュースをストローで啜り始めた。


「いやはや、まさか件の千器様がここまでハチャメチャな御方とは………」


 今度はミルズがハンカチで額の汗を拭きながらそんなことを言い出したんだけど、周囲はミルズの事知らないから“いや誰だよお前”みたいな空気がビンビンに出てる。


「と言うかなんでテメエがここに居やがるんですか。ぶっ殺してやりましょうか?」


 カリラがそう言いながらミルズに掴みかかるけど、当の本人も罪の意識があるのか、すみませんすみませんと譫言のように言いながら頭を抱えるだけだった。


「まあ、そう言ったことも含めて全部説明するからさ、とりあえずこれでも食べなよ」


 そう言って俺が取り出したのは、いつぞやの余ったカレーをタッパーに詰めたもの。

 それを差し出してやれば、途端に真っ赤な顔になったカリラに顔面をめった刺しにされそうになった。


「………と、言う訳でまあこれから回想に入るわけだけど、皆さん準備はオッケー?」


「何わけわからねえこと言ってやがんですか。耳から手ぇ突っ込んで脳みそ引きずり出しちまいますよ」


「うちの子が可愛過ぎてバイオレンス過ぎる件について………ってなんかラノベっぽいね。まあいいや。そんじゃ回想いきますよっと」


 あれは一万年と二千年前のこ――――


「ぎゃぁっぁあ!!!! 先輩の顔面に無数のフォークが!!!!」


「真面目にやりやがれってんですよ」


「すいませんでした………まあ、あの場に残った俺達は神崎の開けた大穴から遺跡の支柱に爆弾仕掛けて、そのまま後から出てきた魔物は皆生き埋めにしたわけよ。総重量数百万トンってレベルの重量だしね、さすがに誰も生き残れませんよ」


「想像よりあっけない戦いじゃの………しかしそれでは貴様らも生き埋めになってしまったのではないのか?」


「既に召喚されてる奴の中に一匹やっばいのが混ざっててさ、討伐ランク118のやつで、こいつをどうにかしないとやばいってことになって、まあ苦渋の選択だったけど、星の記憶に飛んだってわけ。まあ最初からしっかりと話してやるから期待してな」



………。



◇ ◇ ◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る