第131話 うまいマズいは人それぞれ
俺の汚物攻撃にさらされたくない連中が死に物狂いで戦いを終わらせてくれたおかげで、かなり時間的に余裕ができたみたいだ。
本選の開始が午後からとなり、今はその対戦表が組まれている。
ちなみにだけど、俺のゲロをもろに食らったタル君は無事予選敗退したそうだよ。
心神喪失状態で運ばれていったみたいだけどどうしたんだろうね。
なんだか全身糞まみれで、しかもゲロの臭いまでしてくるとかどんな戦いをしたんだろう。世の中怖いもんだ。
「テメエのカスさには本当に呆れも出ねえです……」
本当にあきれ果てて言葉もないのか、お決まりのやれやれポーズさえ取ることなく、わざとらしく大きなため息を吐き出したカリラ。
「いやでも俺のおかげで活動資金がとんでもない額になったじゃん。そのおかげで今君が最高級のホワイトロブスターを食べ放題できてるわけなんだけど、そこんとこどう思うの?」
「ロブスターはうめぇですけど、テメェは色んな意味でマジィです」
一尾で3万ゴールドとかふざけた値段のロブスターが、既にカリラの前に山のように積み重なってる。もちろん、全部殻だけだ。
珍しく満足そうな顔をしたカリラが爪楊枝を噛みながらこちらに鋭い視線を送って来た。
「本選はどうしやがるつもりですか?さすがにあの手はもう使えねえですよ。それに、本選は聞いた話じゃ魔法も魔道具もありみたいじゃねえですか」
「カリラたん。俺相手に魔法と魔道具ありで戦いたいと思う?」
「……失言でした。忘れやがってください」
心底嫌そうな顔になったカリラがワイルドに爪楊枝を吐き出し、皿の上に飛ばし、俺はその爪楊枝を咥えようとしたけど、カリラが投げたナイフを咥える羽目になってしまった。
「あぶねえよマジで」
「なんでナイフを歯で止めてそのまま喋れんですか」
「あー、よくあるし慣れればできるよ」
ほんとナイフとか剣とか針とか、毒サソリとかいろいろ飛んでくることがあるからね。これくらいの芸当ができないと生き残れなかったのよ。
「それにしてもカリラがかなり本気で戦ってるの見て驚いたよ。どこであそこまで個性の訓練したの?」
「統制協会ン中でブレア様とあのクイーンと訓練しといたんですよ。まあ、まだクイーンにゃ歯が立たねえですが」
そりゃそうだろうね。いくらクイーンでも、されどクイーンだからね。俺みたいに糞雑魚ナメクジなのに周囲に基地外ばかりの環境と違って、カリラは普通の連中ばかり見てきたから。世間一般からすれば、クイーンなんて雲の上の存在だし。そもそも統制協会に所属してるだけでも相当なハロー効果を得られるしね。
「ブレアはどうあの?やっぱ強い?」
「正直相手にならねえって感じでしたね……ありゃ化け物です」
やっぱそうかぁ。時間をほぼ停止状態にできるとはいえ、さすがに人体や大きな機械まではまだできないみたいだしねカリラたん。
そんなことが出来ればそもそもハンカチ何か使わなくても、空中の分子の運動を止めればそれだけで壁にできるし。
まああの……えっと何だっけ……ストライクショット?とか言う技の為にハンカチ使ってるのかもしれないけど。
でもあの技も、正直何も怖くないんだよね。
そもそも、自分が困るような攻撃を俺は出来ないんだよ!!!
「飯も食ったし戻ろうか。本選も賭けはあるし、俺の予選の戦い方的に誰も俺には賭けないと思うからさっきと同じで全掛けしていいよ」
カリラのお陰で爆発的に増えた金を、俺の戦いの時に突っ込ませ、さらに頭が痛くなるレベルで金をせしめたんだけど、それをもう一度増やしちゃおうってわけ。そろそろ小国なら買える金額になるけど、どうせ統制協会にそこまでの支払い能力はないから大きな大きな“貸し”ってことにしておく。
そうすれば何か面倒なことが起こった時にこいつらを馬車馬のように働かせることができるしな。
「テメエといると金の価値が分からなくなっちまいそうです」
「基本貧乏生活だけどね」
道具の整備とかに金がかかり過ぎるし、“最悪”が来た時にかかる金は今の所持金の数倍くらいになることもあるからね。いくらあっても困らないのよほんと。
そのまま会計を済ませ、俺達は会場に戻ったんだが、何故か会場の前で俺の似顔絵にナイフを投げたり、腐った卵を当てる遊びが流行り始めたみたいで、皆それに熱中してた。
まあね、俺程の人気者だと仕方ないよね。
「参加してきても?」
「さすがに泣いちゃう」
なんてくだらないやり取りを済ませ、俺達は控室に集まった。他の本選出場者もそこにはいて、どうにも空気がぴりついてる気がする。
あ、もしかして皆俺のあまりの強さに警戒してるのかな?
「ちっ」
まあどうだっていいんだけど。そもそも、俺はまともに戦う気なんざ欠片もねえし。
魔道具あり、個性あり、異能あり、のほぼなんでもありのこの大会が何で剣王祭何て呼ばれてるかの方が俺は気になるくらいだ。
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