第83話 不幸自慢大会地区予選三回戦進出
「…………あっっっっぶねえええええええ!!!!!」
間一髪ブラックドラゴンの突進を、レッドドラゴンの死体を出すことで防いだ俺は、もう息がないブラックドラゴンの首を切り落とし、死体を回収した。
マジで危なかった。カルブロ鉱石だと最悪の場合俺まで巻き込まれて死ぬ可能性があったし、落とし穴も、この距離だとつんのめっただけで、俺にぶつかる可能性があったから使えなかったんだよな。
「取り合えず………ちっと休憩だ」
余裕ぶってはいたが、ブラックドラゴンのあの一撃が相当効いてる………腰を下ろせば、途端に吐血し、激しく咳き込んでしまった。
「思った以上に………まともに当たってたんだな……」
これがブランクか。マジでやばいな。たった数年こっちから離れただけで、ここまで鈍くなってると思わなかった。
体が重いし、あのオルトロウスが異常個体だってもっと早く気が付いてればこんなに疲労することもなかったんだけどな。
「マジで駄目だなこれじゃ」
そろそろなんだ。そろそろ本当にやばい不幸が来る。それまでに装備を整えて、それに備えないといけない。
今の俺では…………ハッキリ言って全く足りていない。
そんなことを考えていたら、ようやくそこで俺のことを見ていやがった奴の気配に気が付いた。
マジでなまってやがるわコレ。
「カーリラちゃーん。お前を置き去りにしたくそ野郎がここにいますよっと。ぶん殴るなら好きなだけぶん殴っていいぞ」
起き上がるのが億劫なため、手だけを上げ、そう言ってやれば、無言のままこちらに近寄ってくるカリラ。
だけど、カリラは何を思ったのか、俺のことを起き上がらせ、肩を貸し始めた。
「どういうこと?殴りに来たんじゃねえの?」
「テメエが死ぬと、職場を探すのがめんどくせえんですよ。だからシャキッとしやがれってんです」
視線をこちらに合わせず、そう言ってきたカリラ。
何となく胸がぽかぽかするのを感じつつ、不思議と勝手に上がる口角を触ってみると、今度は視線を感じた。
「変なこと考えやがったらブチ殺してやりますんで」
「ははっ、さすがにおじさんも疲れてるからね。そう言うのは今日の夜考えよう」
「くっだらねえことしか言えねえんですね、その口。いっそ縫い付けちまいましょうか」
「ごめんなさい。まじでそれは勘弁してください。俺の唇が世界から失われたって泣く女の子たちがいるんです」
「あーはいはいそうですね。テメエの頭ン中にはいるんじゃねえですか」
そんな話をしながら、少しだけ態度の軟化したカリラと共に迷宮をぬけ、ビターバレーについた。
ついたんだが………。
「カリラ、お前は街の外に出ろ」
俺は、これを知っている。
迷宮の主なんか相手にならねえくらい、やべえ存在が、今この街に巣食ってやがる。
「なんでテメエの言うことなんざ聞かなきゃならねえんですか」
強気でそう言ってくれるカリラ。その言葉は嬉しいんだけど、それを聞きたいのは“今じゃない”
「―――邪魔。足手纏いを抱えながら戦えるほど楽な相手じゃねえんだ今回は」
迷宮の主くらいなら、まだどうにかこうにかやりようはあった。だけど、今回はそうじゃない。俺も全力で、今ある全部の装備を駆使しても、どうにもならないかもしれないような、そんな化け物。
かつて俺とチョコチがこの街に訪れた時、この街には小さな遺跡があった。街のはずれ、ほとんどスラムと変わらないようなところに立てられた祭壇。そこはもっぱらスラムの連中の寝床にされてたんだが、スラムの連中が、その神殿の奥に眠る“魔物”を起こしちまったそうで、そこから出てきたのが、イモータルパラサイト。
不死の寄生型魔物と呼ばれていた肉腫だ。やつらは2日で人間1人の生気や魔力、その他の栄養素まで根こそぎ奪い取り、繁殖する。その繁殖した連中がため込んだ魔力は、その母体であるイモータルパラサイトに送られ、さらに活動は活発になる。並みの攻撃は効かず、宿主の魔法耐性を獲得しちまうって性質で、この寄生型魔物のせいで当時は多くの英雄や勇者が死んだ。
それが今、この街で再び猛威を振るっている。
当時はそれなりに成長し、英雄の戦い方を身に着けたチョコチと二人で何とか封じ込めることに成功したんだが、やっぱりあの時無理してでも殺しとくべきだった。その時のツケが回って来ちまったんだな。
「足手まといにゃならねえです。私も英雄の端くれだってんですよ。多少の魔物くれぇ訳ねえです」
「…………昔な、俺とチョコチ……シグナトリー・バンクと二人でようやく封印したのがこいつだ。シグナトリーと同等か、それ以上に戦えるってんなら同行を許すが、それ以下だと思うんなら…………邪魔だから隠れてろ。そんで絶対に出てくるな。何があっても」
もし、カリラが寄生されたら、おそらく本体が来る。そうなればカリラの体は本体の宿主にされて、苗床になるだろう。
全部を絞りつくされて殺されるんじゃなく、神経系や脳みそにまで根を張られ、意識を保ちながら化け物として勝手に動く体と、苗床として共生していくなんてのは…………死ぬよりもきついだろうな。だからこそ、絶対に連れていけない。何としてでもこいつは安全なところに置いておかねえといけない。
せっかくこいつがまともに生きていけるかもしれねえってのに、いきなりそんな目に会うなんてのは…………あまりに不幸過ぎる。
「私の…………せい…………じゃねえ、ですか…………」
小さく呟かれた言葉は、彼女にしては 珍しく力がない物だった。
「迷宮の暴走も、これも…………全部私の不幸が…………アンタを殺すために………全部…………全部私のせいじゃねえですか!私の飼い主は皆死ぬ!なのにあんたは初めて夜を超えちまった!だからこんなことになっちまってんですよ!呪いだかなんだか知らねえですが、“これ”が!私の不幸が!テメエを殺すためにこうさせてんですよ!だったら…………その責任くらい…………取らせろってんです…………せめて、自分のケツ自分で拭くくらい…………させやがれってんですよ…………」
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