第50話 強面の禿って基本、強いか糞雑魚
勿論、騎士団や憲兵、傭兵何かの集団を襲って装備を集めた可能性もあるけど、そいつらをどうにかできる様な盗賊だと、かなり手強いからお宝の為に戦うとマイナスになる可能性もある。要するに、装備が整うような奴らはどんなパターンでも面倒なんだ。
「サクサク先に進みましょうね」
そう言って、馬野郎に鞭を入れると、舌を垂らし、涎をまき散らしながら血走った目で加速していった。ハッキリ言えば放送禁止な顔で爆走している。
「師事する人を間違えましたわ………」
そう言いながら額に手をやり、ローズは馬車の中に戻っていき、俺もそれに伴って馬車の中に戻ろうとしたんだが、その瞬間に俺の面倒事センサーがバンバン反応を示しやがった。
なんだか最近かなり調子よく俺に面倒事が降りかかってきている気がする。
急いで周囲の気配を探りながら、目を凝らせば、遠くの方に大規模なキャラバンが移動しているのが見える。面倒ごとの臭いはするが、それよりも活動資金を捻出しないといけない悠里さんはそのキャラバンに合流することに決めた。
何より、あれだけ大規模なキャラバンなら、相応の護衛も付いているはずだしな。こっからは少しだけ楽をさせてもらおう。
この面倒ごとの臭いも、そいつらに押し付ければいいし。
「ローズ、目の前にキャラバンを発見したからとりあえず合流しようと思うんだけど」
「好きにしてくださいまし」
少し不貞腐れたような様子のローズは、俺の取り出したアーティファクトの、記憶の中の音声を録音する結晶を耳に当てている。
今はたしか嫌がらせを兼ねて“たーらこーたーらこー”って奴を流してるはずだ。
「少しかしなさい」
それを強引に取り上げると、ローズがさらにむくれた顔になって、俺を睨みつけてくるが、まあ大丈夫だろう。
これから吹き込んでやる音楽は俺の大好きなあれだしな。
「ほれ、できたぞい」
額に当てていた結晶を再びローズに投げ渡せば、それをローズは恐る恐る耳に当て、聞き始めた。
あと20分もしないでキャラバンに合流できるし、それまでは一休みしよう。
そう思って目を閉じる。冒険者たる者、いついかなる時も眠れるようにならないといけないのだ。
恐らく、俺が目を閉じてから、10分程、そのあたりで異変が起きた。
「はいッ!!!」
何故か、ローズが興奮した様子ではいはい言い出したのだ。
それからさらに2分後。
「そしてーかーがやーくウルトラソゥッ!ハイッ!!!」
その内赤いチェックのシャツとジーンズを買ってやろうと心に決めた。
「ちょっとあなた!なんなんですの!?この魂を震わせる音楽は!!!」
魂震えちゃったよ。
「それにこのギュインギュインって鳴るものや、ヴォンヴォンなるものは一体何なのです?」
ギターにベースのことかな?ってか知識なしにベースの音しっかり聞き分けられるとか耳いいな。
「もしやこれは千器様ッ!?」
「違う、それだけは違う。関係各所どころか国民全員から石投げられるからやめろ」
まあ、とりあえずローズがV'z にハマったみたいで何よりです。
これで俺と多少は話が合うようになるね。
「お、ついたみたいだぞ」
バシャヒクノスキーがゆっくりと速度を落とし始めていることから、おそらくキャラバンの側面に付けることに成功したんだろう。
急いで外に出てみれば、全長40メートルを超える亀の上に商隊がキャンプを張っていた。そして、それがつり橋のような物でいくつも並べられており、亀も一定の速さと間隔を持って歩いている。
こいつは確かガイアロックタートルだったよな。俺のいた時のキャラバンの様子とはだいぶ違うみたいだ。
俺が見えた時はかなり遠くて、規模と移動速度でキャラバンだって判断したけど、まさかこんなことになってるなんてね。
「おーい!誰かいないかー?」
亀の上にいきなり上がると攻撃されかねないので、とりあえず声を掛けてみる。
勿論武器の類は何も持っていないので、警戒されることもないと思いたい。
「んだー?あんちゃん旅人か?にしちゃいい馬持ってんじゃねえかー!」
亀の甲羅の上から顔をのぞかせた禿げ頭のおっさんが俺に声を返してくれた。この商隊は排他的な部類ではないようで、何とかなりそうだ。
うまく行けばそれなりに便宜を図ってもらえるだろうし。
「俺達も同じ方角を目指してたんだが、よかったら一緒させてくれないか?」
「報酬は?」
「現物支給」
短いやり取りが終わり、禿げが一度鼻を鳴らす様に息を吐き出し、引っ込んだ。
その数秒後には梯子が投げおろされてきた。これを登って来いってことなんだろうな。
「ローズ、どうやら上に招待してもらえたみたいだぞ。それと馬野郎ども、お前らは亀に合わせて移動しとけ。間違っても足元に行くなよ?踏みつぶされるからな」
バシャヒクノスキーに注意すれば、再び親指を上げたポーズを見せてくれた。
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