第34話 睾丸って何かレアアイテムっぽいけど、キンタマって何かあれじゃね?
「王様は正式に大塚を勇者から除外したそうだ、それに伴って、大塚の勇者としての活動を全面的に禁止し、援助も打ち切るそうだ」
刀矢が何を言ってるのか分からなかった。よりにもよって、どうしてこのタイミングでなの?それに、勇者じゃないから助けない、とか本当に意味が分からない。
だってクラスメイトだよ?同じ世界から来た仲間だよ?どうしてそうやって切り捨てられるの?アタシの知っている刀矢なら、絶対そんな事言わなかった。虎太郎も、なんでそんなに普通にしてられるの?なんで興味がない様な、そんな顔してられるのか分からない。
「は、意味わかんないんですけど、勇者じゃなくても仲間じゃん」
苛立ちが、口から付いて出てしまった。
でも、それでも言ってやらなきゃ気が済まない。
「勇者じゃないやつの為に、勇者が犠牲になる必要はないって言ってるんだ」
アタシにそう返してきた刀矢の顔は、今までに見たこともない様な、冷酷で、冷徹なものだった。
なんでそうなるの、なんでそんなことが簡単に言えちゃうの?
「人を助けるのが勇者なのに、仲間を見殺しにするとか、そんな勇者こっちから願い下げだよ」
一人でも、アタシは彼を助けに行く。
だって、彼にしか、アタシの居場所を作ることができないんだから。彼がいなくなったら、アタシはまた刀矢と一緒に組まされる。それだけは避けたいし、何より、アタシは友達を見捨てたくない。
「待てよッ!」
「いたっ……ちょ、痛いんだけど」
かなり強めの力で刀矢がアタシの腕を掴んできた。
今までにこんなことがあったことなんかない。
「お前は俺のパーティーに入ってもらうことにしたから、リーダーの俺に従ってもらう」
無機質な表情でそう言い放った刀矢に、全身が悪寒に襲われるのが分かった。
ぶつぶつと鳥肌が浮かんできて、恐怖からか、それとも助けに行けない後悔からか、自然と涙まで溢れてきた。
だけど、その時この場においてたった一人、笑みを浮かべる人の存在を目にしてしまった。
近衛騎士の様に綺麗な鎧に身を包み、綺麗な顔立ちの男、副団長さんだ。
何故か、彼は今のおかしくなった刀矢を見て笑っている。
おかしい、何がおかしいのか分からないけど、尋常じゃない違和感を感じる光景だった。
「対物障壁、でござる」
恐怖で動けなくなったアタシと、刀矢の間に、半透明の板のような物が現れ、それが刀矢を弾き飛ばす様にして、アタシから遠ざけてくれた。
「行くでござるよ、ここは拙者がどうにかするでござるから」
そこに立っていたのは、デーブだった。
アタシよりよっぽど震える足で、怯える様な表情で、額には汗をびっしりと敷き詰めながらも、必死にアタシに笑みを見せてくれている。
「大塚氏は自分らの仲間でやんす」
ザっと、地面を擦る様に歩みを進め、デーブの隣に並んだガリリンも、震えながらアタシを見て笑ってくれた。
「大丈夫でやんす、自分らはこう見えても勇者でやんすから、罰は受けるだろうけど、殺されはしないでやんす」
二人が、そう言ってくれた。
きっと、彼らもそうなんだ。彼の作る日常に、居心地の良さを感じて、彼を大事に思っている人達なんだ。
「行きましょっ!早く!」
アタシの腕を掴み、走り出そうとする須鴨ちゃん。
彼女がいれば、彼が怪我をしてても回復することができるはずだ。
それが分かっているから、二人は刀矢たちの前に立ったんだ。
自分が行くよりも、アタシと、須鴨ちゃんが行った方が良いって、そう思って。
「君たち、この決定は王命ですよ、今の君達の行動は国家反逆罪として処刑されても何も文句は言えないことを、しっかりと理解していますか?」
「でゅふふふっ!なに、これはただの反抗期ってやつでござるよ」
「子供の成長を見届けるのも親の役目でやんす、だからお手柔らかに頼むでやんす」
見た目は、まああれだけど、この二人の背中がとってもかっこよく見える。
勇者だなんだって言われて、おかしくなっちゃった刀矢なんか比べ物にならないくらい、今の二人はカッコイイ。
「ごめん、ごめんね、必ず、つれて帰るからっ!」
そう言って、須鴨ちゃんと二人で駆け出そうとした時、空から大きな炎の玉が落ちてきた。
あんなものが当たったら、間違いなく死んじゃう……っ!
「―――かっこいいところ持ってかれちまったな」
だけど、その炎の塊は、一瞬で切り刻まれて、アタシたちにぶつかる前に霧散した。
それをやった彼は、この場で唯一怖がるような素振りもなく、余裕の表情でその場に立っている。
それを見た副団長さんが、初めて怒りを露わにした表情を浮かべた。
「どうしてあなたがっ!」
「あぁ?そんなの決まってんだろ、ダチ公が道踏み外したってんなら、ぶん殴ってでも止める、そうだったよな、刀矢」
鋭い視線を刀矢に向けた友綱が、デーブとガリリンの前で剣を抜き、構えた。
それを見た、刀矢、カストロさん、副団長は苛立ったような顔で、それを見てる。
「2分くらいならまあ、稼げると思う、その間にさっさとあいつを回収してこい」
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