第18話 キャラのいいデブは好かれる
「第1回戦は坂下パーティーと、見妃パーティーとする。条件は以前にやった摸擬戦と同じ条件とし、勝敗は試合終了後の戦闘継続可能な人数、状況で判断する。戦闘中に相手を全滅できればもちろん勝利となる。他に何か気になることは?」
いつの間にか俺達のパーティーがギャルに乗っ取られてたんですが、それはどういう事なんでしょうか。
なんて質問をする勇気の無い俺はチキン野郎ですはい。
「相手はミッキーんところかぁ、結構強面ぞろいだね」
ミッキーこと見妃さんなんだが、まあ見た感じ、時代錯誤のヤンキーJKだ。
それの仲間ってか配下が3人、二人は女、1人は男だね。
何それ、ハーレムじゃん、あいつ殺そう。
まあ、見妃さんは俺のことをまるで石の裏にへばりつくダンゴムシ程度の扱いだったのでそこまで記憶にはない。
あの取り巻きの女子二人は結構俺のことを陰でぼろくそに言ってやがったな。
全部聞こえてっからな、あれだろ、ファミレスで大声で電話しちゃう系女子だろお前ら。
「まあ、向こうは脳筋だらけだし楽勝だな。それと須鴨さんは陣を使わなくていいや、適当に使える魔法で支援よろしく」
プチ作戦会議も終わり、最初の摸擬戦よりかなり距離を開けた状態で集団戦闘が始まった。
案の定向こうは刃引きされた剣を担いで全員で特攻してきたけど、まあ何も怖くねえっすわ。
顔以外。
「デーブ君やっておしまい!」
「障壁でござる!」
ぶるるんと、腹を揺らしながら展開された障壁に、見妃パーティーが足を止めさせられる。それも当然のことで、何せデーブの個性は対物障壁。対象が細かく設定されている個性ってのは総じて優先度が高いんだよね。
まあ訓練で上げることもできなくはないんだけど。
「んじゃガリリン出撃!デーブはそのまま相手の後方にも障壁お願いシャス」
ガリリンが両手を金属に変換させ、飛び出していく。
干渉力は俺と変わらないけど、さすがに勇者の基本的な力は俺とはけた違いに高いな。
そうこうしている内にガリリンと、見妃パーティーの1人がぶつかり合ったけど、ガリリンはたった一号ぶつかり合っただけですぐにその場から飛びのいた。
「テメエに逃げんなやッ!」
ヤンキーが怒鳴り声をあげるが、もう遅いんす。ほんとごめんなさい。
「はいデーブ君、プレス」
「ござるぅぅぅぅッ!」
不細工な声を上げながら、決め顔で拳を握る動作をしたデーブの前では、背後に展開された障壁と、前方の障壁が一気に集団に迫り、そしてプレスした。
「ガリリンは挟まれてるのを頼むは、逃げたのは…………言う前に行っちゃってら、まあ優秀でありがたいんだけどね」
既に坂下が飛び出しており、その手には剣が握られている。
「ドレスアップ【|戦士(ソルジャー)】」
一瞬の閃光の後に、坂下の服装が変わり、まるで冒険者のような格好に早変わりした。
これがドレスアップの能力か、スゲーアタリだわあれ。
「なめんじゃ…………ねえよ!」
唯一デーブの障壁サンドイッチを回避した見妃さんが、坂下の振り下ろした剣を受け止め、強引に振り払った。
坂下は少し後方に飛ばされ、尻餅をついたけど、もうこの時点で俺達の勝利は確定なのよね。
「光を灯す小さな炎よ、礫となりて、眼前の敵を燃やせ!【火球】!!」
須鴨さんの手から放たれた火球が、丁度坂下を吹き飛ばしたばかりで隙だらけの見妃さんに直撃し、それを見た近衛が試合終了の声を上げた。
「いぇーいいぇい!」
「ぶふぉふぉ、拙者の障壁が大活躍でござるな」
「自分の個性も炸裂したでやんす」
喜びをぶつけ合う三人をしり目に、俺は少し離れたところで手を抱き込むようにしながら赤い顔をしている須鴨さんに声を掛けることにした。
「ナイス止め、いぇい」
「あ、はい、ありがとうございます………えっと、いぇい?」
ハイタッチを要求してみたら少し困りながらも応じてくれた。
何この子可愛いんだけど、お持ち帰りしたい。
「いっぇーーーいっ!」
しかし、そんな初々しいやり取りに、ボディースラムで割り込んできた坂下によって俺は案の定潰され、下敷きにされた。
こっちはナイスおっぱいだ、ぜひ次は背後からじゃなく正面からお願いしたい。
いいムードでわいわいしながら端に避け、そこで今の良かったところや、反省点なんかを整理するために円になって腰を下ろすと、そこにずかずかと神崎がやってきて、俺をビシッと指さした。
「この卑怯者!他の皆に戦わせて、お前は何もせず見てただけじゃないか!それでどうしてお前まで勝った気になってるんだよ!」
「ちょっと刀矢!そんな言い方ないじゃん!」
「どけよ雅!俺はこいつに言ってやらなきゃ気が済まないんだ!」
気が済まないからって好きな事するとかお前生来犯罪者コースまっしぐらじゃん。
お先真っ暗勇者とか勘弁してくれ。
「坂下、大丈夫だ、神崎の言うことにも一理あるしな」
一人多い状況で参戦すれば、そこで卑怯だと言われるのなんか目に見えてたが、まさか戦わなくても卑怯者か、これは逃げ場がないな。
あくまで、こいつと、今の声に反応して俺を睨んでる連中が納得するような逃げ道がないってだけで、言い返そうと思えばいくらでもあるけどね。
屁理屈を言わせたら天下一の俺を舐めるんじゃありません。
「へーへー、俺はひきょーもんだぜ?だけどさ、それがお前になんか関係ある?」
「くっ、お前のせいで俺達勇者まで迷惑するんだよ!」
“俺達勇者”ね、まあ別に何と思われようがいいんだけどね。
「じゃあ頑張らないとな、俺とお前らは違うって皆に思ってもらえるようにさ」
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