第8話

 「では、あなたの家まで一緒に行くというのはどうでしょう。」

 咄嗟だった。

 その瞬間は名案だと感じたが、すぐにとんでもないことを言ってしまったことに気づいた。会ったばかりの女性に対して言う言葉ではない。当然だ。

 私はすぐさま自分の言ったことを訂正しようとした。

 「わかりました。いいですよ。」

 なんだと。

 私は耳を疑った。思わず女性の目を見つめてしまった。その目は私に対し警戒心など微塵に感じさせなかった。

 雨は少し小雨に変わった。


 雨の中、私は彼女と道を歩いる。

 比較的大きな傘だが、さすがに2人は入りきらないので大半のスペースを彼女に明け渡した。そうなると私の身体が半分常時雨に濡れ続けることになるのだが、彼女と会う前から既に服は雨に打たれ濡れていたので、正直気にはならなった。

 5分程歩いた。その間どんな話をしたのか。正直よく覚えていない。

 「もう近くです。」

 彼女のその声にふと我に返った。

 気づけばそこは見慣れない建物が並ぶ場所だった。

 

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時間恐怖症 ゆうさん @denchiyu29

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