第14話 初恋の少女の正体に気が付いた



 フェイが護衛騎士になったばかりの時は、本当にホムラの事を悪人だと思っていた。

 自分を守るために倒れた者達に目もくれず自分の身だけを優先し、我が儘ばかりを言っている女性。

 そんな彼女の姿を見た時、フェイがどれだけショックを受けたかは、ホムラには分からない事だろう。


 だが、短くない時間を共に過ごす事で、その内に秘められた優しさをフェイは知る事になって、評価を改めたのだ。


「エルミア様は、尊敬できる巫女様ですよ」


 フェイの言葉に対して答えるホムラもまた、ある事実を打ち明けた。


「仕方ないわね。あまり人には話したくなかった事だけど、特別よ」


 それは精霊だったとある少女の話だ。

 精霊を道具として利用するグウェン帝国に捕まっていたその少女は、辺境の施設に閉じ込められて過ごし、ある時にホムラと言う少女に助けられる。


 その際に事故で、ホムラと精霊の少女の精神が入れ替わってしまい、ホムラは精霊の体に、精霊の少女はホムラの体に入ってしまう。


 ホムラとなってしまった精霊の少女は、浄化巫女として見いだされ、務めを果たす事になるのだが、人間の世界の事が理解できずにいつも苦しんでいた。

 しかし、その傍に護衛として精霊となってしまった本物のホムラがいてくれたために、今まで頑張ってこれたのだと。

 

「だからその少女は、その本物のホムラの為に幸せな世界を作ろうって思ったのよ」


 その話を打ち明けられたフェイは驚く。


「それじゃあ、貴方は……」

「私はホムラ・エルミアではないわ。私の名前は、リリアンティ・エル・クライシス。それが聖霊としての名前よ。リシア……本物のホムラと貴方にだけ教える名前」


 本物のホムラは、ずっと同僚として接してきたリシアだと、そう彼女は言った。

 

 悪女となってしまった初恋の少女の思わぬ秘密を知ってしまったフェイは、これまでしてきた事、言って来た事を考えてしばし頭を抱える事になった。


 だが、しかしそれ以上の喜びをその胸に宿してもいた。


「ありがとうございますホムラ様……いいえ、リリアンティさん。俺もリシアの……本物のホムラのようにこれからも貴方の傍にいても良いですか」

「当たり前じゃない。我が儘言ってこき使える貴重な人材なんだから、そう簡単には手放してあげないわよ」


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初恋の少女と再会したら悪女になってた 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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