第13話 初恋の少女に心境の変化が起きたようです



 陰謀をくじき、無事に浄化の儀を終えて、ホムラの婚約は白紙になった。

 その後は、特に特別に憤おるでも失望するでもなく、ホムラは帝国との付き合いを続けていた。


 だが、いつものホムラの為に任務に同行し、公務についてまわった帰りにフェイは彼女の些細な変化を知る事になった。


 厳重に守られた馬車の中、休憩中に呼ばれたフェイは二人でホムラと話す機会を得る。

 グウェン帝国の者はたくましかった。婚約が白紙になった後も、ホムラの勇気に感動したとかで、陰謀の事を横に置き次は自分にと、有力者からの見合いの提案が後をたたなかった。


 いつもの任務の帰り、馬車に揺られながらの帰路でホムラは同乗する護衛へ声をかけた。


「私を嵌めてくれようとしたあの王子、前々からそれなりに交流はあったのよね」

「はぁ」

「夫人にされるように手の甲に口づけをもらったり、エスコートを受ける際に手を取られたり肩を抱かれた事もあったわ」

「そ、そうですか」


 複雑な心境になりながらも、その話を聞くフェイ。

 ホムラはそんな護衛の内心に気が付かずに話を続ける。


「その時は何も思わなかった。これも私の役目だって、割り切っていたわ。だけど……全てを知った後は少し違った。あの王子に触れられた時、嫌だって思ったのよ。私は我がままになってしまったのかもしれないわ」

「そんな事は、無いと思います」

「じゃあ、何なのかしら」

「ええと……」


 ホムラの変化を嬉しく思ってしまったフェイは、リシアの事を思い浮かべて後ろめたい思いを抱えつつも、言葉を口にしていく。


「残酷な事を考えてるのかもしれまませんが、俺はホムラ様にもっと自分を大切にしてほしいと思ってるんです。きっと内心ではリシアも同じ気持ちですよ」

「これ以上我がままになって欲しいって事かしら? 貴方そういう趣味なの?」

「ち、違いますよ! つまりですね、嫌な事があった時は我慢しないで欲しいって事です、巫女様なんですからある程度はそうしなくちゃいけないんですけど、もっと他の人間を頼ってほしいんです。貴方がどれだけ大変な思いをしているのは、本当の所……私達などでは分かってあげられないかもしれませんけれど、それでも、少しでも貴方の抱える苦しみを減らしたいと思っているんです」


 そう述べたフェイは、ホムラに自分の過去を打ち明けた。

 過去メウィスの国と対立関係にあったグウェン帝国の境界で、敵国だった国の兵士に追いかけられ、良心を失くしたショックなどで、記憶がなくなった事。その後運よく、育ての両親に引き取られた事など。


 自分の事が分からず、悪人かもしれないと無用な不安を抱えていたそんな幼かったフェイを、励ましてくれたのがホムラだったと言う事。


「最初はただの悪女だと思ってたんですが、今はエルミナ様は優しい悪人だと思います」

「それ、誉めてるようには聞こえないのだけど。フェイ」


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