第12話 初恋の少女は逞しく陰謀にやり返した



 それは年に一度に行われる儀式だ。

 グウェン帝国の王子とメウィス国の巫女が、共同で取り組む仕事。

 それは、浄化巫女の最も大事な役目、穢れを払う儀式だった。


 帝国の王子は、ホムラにその儀式にこさせないように妨害し、偽物のメウィスの兵士で自国の兵を襲わせ、難癖をつけて和平を解消……までいかずとも両国に亀裂を加えようと計画していた


 その情報をあらかじめ掴んでいたホムラは、両国の信頼できる人間に根回しをして、その時に挑む事にした。


 そして、当日。


 浄化の儀を執り行う為に出発したホムラ達は、王子が差し向けた者達に一旦は宿代わりに滞在した洋館に閉じ込められてしまう。


「本当にこんなやり方で脱出するなんて、私を誰だと思ってるのよ……。こんな埃臭い天井裏を這いつくばて進む事になるなんて……」

「敬愛して仕えるべき巫女様ですが、今は非常事態です。我慢してください」

「むぎゅっ、ホムラ様ごめんなさい、お尻押してもいいですか」

「リシア! わ、私のお尻はそんなに大きくないわよ!」


 しかし、ひと悶着ありつつもフェイとリシアの力を会わせてこれを解決。


 ホムラ達は、敵の策を乗り越えて浄化の儀を執り行う為の目的地へと向かった。


 そして儀式に間に合ったフェイ達は、荘厳なる神殿の祭事を執り行う広い部屋の中で、先行していた自国の一兵士として潜り込む。


 そして、偽物のハレルの兵士が行動したのを見て、気が満ちたと判断。

 自分達の正体を現した。


 不意を打たれたのを逆に打ち返したフェイ達は、相手が立ち直る隙を与えずに紛れ込んだ敵兵を下し、帝国の王子に証拠の数々をつきつけた。


「貴方の企みはもうすでに分かっているわ、観念しなさい! 貴方の策にすでに知れているのよ!」

「馬鹿な、出鱈目だ! そもそも、盗み聞きをしていたとして、その場所はとじられた場所のはず、なぜ企みを聞けるのだ!」


 ホムラとフェイはその答えになるよう、リシアを示した。


「それはあたしが聞いたんだよ。だってあたしは精霊だから」


 宣言しながらリシアは羽を出す。

 それが何よりも雄弁に語る証拠だった。


 王子は、堂々と姿を見せつける様にして立つホムラと、リシアを見て、何かに気づいたようだった。


「そうか……っ、お前はあの時わが軍の施設から、奴と入れ替わって逃がてしまった……」


 そうして、観念した王子を捕え、帝国の戦争推進派の企みは完膚なきまでに粉々に砕き終わったのだった。


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