第2話ソラの章-淼(びょう)の観覧車と石段の十二干支神たちからの物語-

ガタンガタンガタンガタン


立派な内装からソラはふくと一緒に車窓から夜空を眺める。

キラっと光るとひときわ大きいほうき星が流れ落ちたかと思うとピカッと光りそこに雲の渦をバッと創造し、大きな稲光が走ったかと思うと

ドンガラガッシャーン!!

と車内のソラまでびりびり電気が走る凄まじい雷になった。

「うっ」

反射で腕で両眼を覆い数秒たってから銀河系でもできるみたいな前触れだなぁとまた車窓から外を見るとキラキラ何千ものの流れ星が360度ソラだけの空座標に波紋を広げる様に色んな弧を描きながら真ん中にいきなりバッと暗い湖にオレンジ色の観覧車を映しその90度手前には壮大な雲海とともに灰色の巨大な鳥居が背を傾けながら石道とともに佇んでいた。

「なんだろうあれ…降りたいな…」

ふくは、ほぉぉぉ!と両頬をみょーんと摘んでおもち!んん??!違うでちゅ、おともだち!とちいちゃなおててをぶんぶんぶんぶんふって、ち!おろしてくれぃ!とソラの服を一生懸命ぷりぷり引っ張る。


「すみません!ここで降りれませんか!?」


洋服を着た何億キロの銀河の彼方までの大旅で羽を休めるために乗車している渡り鳥だらけのぎゅうぎゅう詰の車内にソラの声が響き、渡り鳥たちが一斉にこっちを振り向く。

立って琥珀色のフレームの老眼鏡をかけながら新聞を読んでいた渡り鳥がしわがれ声で「切符うさぎさん!よんでまっせ!」と大きく咳払いすると「はいはい!今チケットを確認しますよ!」と節目をした銀河色の車掌服にピシッとした帽子を片手に「お待たせしましたな。車内は揺れるので皆さんしっかりつり革につかまって!」というと


きーーーーーーーーっ!


とけたたましい急ブレーキで乗客は吹っ飛ばされるかと思いきやソラは勢いよく投げ出されたかと思うとそこはすぐそばが観覧車を映し出す水面のそばにふくと知らぬ間に降り立っていてあたりはしんとしていた。


「…あ、あれ…また気がつかないうちに旅の場所に降り立ったみたいだね…」

あまりに突然のことにきょとんとしながらふくをみつめるとふくは安全なソラの胸元にて しっかり 右よし!左よし!前よし!ちちちのちぃ! と全身で歓喜と興奮を表す。



足元にゆったり億年の時をかけるが如くの雄大な雲が流れる。観覧車から90度左側の地面の方向に巨大な鳥居のもとへの石畳みを渡ろうとするとぽつぽつぽつとどこからともなく両側の提灯が橙の温暖色に灯ってまっすぐお進みと優しく教えてくれる。ズボンの裾を通り過ぎていく雲を手で掴もうとしては「ちちちぃ!」と嬉しそうにジャンガリアンハムスターのふくがぴょこぴょこ白い綿(わた)に隠れたり みょっ と頭を出したりしてソラの脚を鼻歌交じりに上下駆けっこして遊ぶ。


雲海の中進むにつれてぽつぽつ照る石段のような場所には十二干支の漢字と絵が刻まれておりゆらゆら雲海の流れと遊ぶ。


「牛さんでちゅ!ふくは牛さんの背中に乗って何処までも遊んだ昔を思い出す度に感謝の気持ちでいっぱい!」


ふくは十二干支を眺めながら今度はソラの胸元をころんころんきゃっきゃっ転がるので無垢なふくが落っこちないようにソラは両手であちこち身体を遊ぶふくを支えようとする。


「玄武とかけっこだ」丹波白兎が卯の石段から紅の瞳とともに現れるとぴょんっと高くツキの使徒の鹿のように勢いよく雲海を跳ねて大きな通りに出来た満月に飛び込んでそのままクレーターの灰色になるとすすきをもって遊び月面で遊ぶ。

竜の石段からは青龍がばっと現れると「勾玉の主のお友達かな。タツノオトシゴくんとは仲良しでね。リュウグウノツカイをツキビトとともに海の都に使わせよう。その時は人魚姫とわだつみ(綿津見/弘原海/海の神)がずっと深海の底から唸り声とともに地震を起こすかもしれないので津波に気をつけるんだよ」

ゆぅらゆぅら巨大な身体を揺らしながらソラを優しく温かい瞳で同じ目線で見つめながら意味深げなことを教えてくれるとジャンガリアンハムスターのふくにむかって


「お主のように縦横無尽に野を超え山を越え海を越え雲を超え時代を超えどれも選別せず選り好みもせず流れるままに揺蕩う、ある種寛大な心が今時の忙しない余計なことで時間を過ごしてしまうものには的確かもしれないね」


にっこり青龍は瞳を細めながらまんまるつぶらなおめめを のほぉぉぉぉ といつもながら青龍の鱗の金色銀色銅色月色美麗に変幻するグラデーションに我を忘れて心ここにあらずな天真爛漫なふくにむかって云う。平常運転なことにこのときふくは一面メダルの色に合わせた色調変化のすすきの野原で丹波白兎と玄武とかけっこするものの

「みんな同じお餅色でいいのでちゅ!すすきじゃなくて小麦でもなくてライ麦でもなくてはと麦でもなく餅米でちゅ!」


とにっこり嬉々として鼻息荒く


「ふっくらふくふく!」


とまたしてもぽわぽわ悦に入ってちいちゃなおててを腰に当ててえっへん。それを見守る丹波白兎もにっこり。玄武も柔らかく目を細める。そんなほんわかあたたかい夢に夢見る空想世界だった。


次の巳の石段からは全身真っ白、瞳があすかルビーのような苺色に染めた神使いの大蛇がしゅるるるると雲海の波を長い胴体をくねくねくねくね上下に横波を前に送りながら現れてソラに謎かけをする。


「この世で最も幸せで平和な場所から来たんだ…全身真っ黒な蛇はきっと冒険家のキミをまたしても楽しいひと時に誘うだろう。その蛇は大地をモグラのように穴を掘り地底を旅しウミヘビと遊び星座として道を迷うものへ一筋の光射抜くものである。好きなものはリンゴだ。林檎を丸呑みしたときキミはまた真理を得て白蛇の都と黒蛇の都からわだつみを護らんとする奇岩の民と仲良く海藻と星が揺れる街へキミを誘うだろう。海藻は青と緑と黒が仲良く笑う。今もオレンジと淡い紅色をひらひらさせながら海をたゆたい息をする」


サンゴやヒトデなどを想像しながらソラはツキビトという言葉に何処か聞いたことがあるなぁと記憶を回想するが次の干支たちの声に心を奪われて行く。


馬、羊、猿、酉、戌、猪。


酉以外の獣たちは四肢を自由に雲と遊び流れ星が雲海に落ちたりそれはそれはとても美しい光景だった。今来た道を振り返ると足より下で優しくオレンジ色を煌々とさせながら静かに動く。馬の群れは真っ白の一角と翼を持つペガサスとともに雲の原を高天原とともに駆け抜け、雲の牧場でオオカミと共存する羊の群れは二つの内にまぁるく曲がった角を角笛のホーンで遊ぶケンタロスと平和に銀色の星屑の天の河原をわたる。上からキラキラまばゆき瞬きすればカランコロンと音を立てて流れ星がぶつかり合った欠片がパラパラ焚き火でちる火の粉のように鱗粉のような煌めきを見るものに与えながら猿の雪山ならずの雲丘の麓に出来た星屑の泉に浸かり、両手でサラサラ砂音のようなものとともに天の川の三角州のような堆積した塊を濾過してまた空飛ぶ鉄道の線路を創造して新しい道筋を綺麗に象(かたど)る。


パンクしそうなほどの車内に乗っていた渡り鳥だちがわらわらと所狭しに海を泳ぐ空飛ぶ鉄道の汽車から落っこちないように肩翼でぶら下がりながらもみんなで肩翼で手をゆらゆらふる。すると雲海の下から白鳥の群れが悠々と飛び出し空座標の頂目指して天高く舞う。一羽だけまるで背中でこちらを見守る朱の観覧車の化身のような朱雀が炎を尾や翼を揺らぐたびにゆらゆら火の粉を散らせながら きーーぃっ と鶴と天空をくるくる迂回すると左側から右側に大きく旋回して今も絶え間なく流れ落ちる数千の流れ星ともにまた雲海の下へ潜っていった。

「南を教えてくれたね」

あまりにも美しい世界に心清まり胸の高鳴りは鈴の如く鳴りそして鳥居に近づくソラは幸せな一路とともに旅人の心をまた知る。


おおいぬ座が駆け、巨大な猪がスイカの模様と等しいうりぼうを連れて交差する。



ああ。美しいな…



雲の上の物語を紡いで交差する。そのわらべ歌を大地で知り海に溶け込ませて雨を降らして川になり野原山を耕しそこに歴史を創造する。


土段に刻まれた十二干支の文字はひらひら浮かび上がるとバラバラになり線と点になりソラの描くソラだけの空座標を泳ぐ宇宙と翔(かける)雲海を線譜のようにして滑らかに滑りそしてわらべ歌を歌って優しくぽっと水面から潜るようで浮かび上がるオレンジ色の観覧車をゆらゆら見守りながら踊り会う。


「とりい〜

と〜〜りい〜のなかに〜は


ひと〜つは 海


ひと〜つは さんずい 氵


ひと〜つは やまなみ〜


ひと〜つは ぎょうにんべん

ふたつになって あおは息吹き

みっつになって それはひとつもやまず

つちにかえるが花園へ

みっつは溶けてよっつになって

はじけてとんでかなでてあそぶ

手を繋いだら円ができて

輪ができてあそぶ気持ちは

未だこどものこころを忘れず

ときを知る」


刻の音を鳴らせてパチンとそこでまたしても切符を切られて先ほどまでいた鳥居を下にしてソラは空飛ぶ汽車に乗せられていた。


「幸せを呼ぶバターサンドクッキーを渡り鳥とともに召し上がれ」

車内で車掌うさぎが車内の渡り鳥たちにサブレットをまいていく。福は内。平和なれと。



雲海を悠々と跳ぶソラとふくが乗車した空飛ぶ汽車はとても…とても美しくソラに浮かび上がっていた。地球上の誰かが目にした光景だったのかもしれない…

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藝術創造旋律の洪水-第二部- 池田奈央 @NaoIkeda

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