第二章 起承転結の承。主人公、ヒロインと遊びに行くの図。・その1

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 そんなこんなで、べつの日にラッキースケベはギャグとして使えると教えたり、ろくにキャラもできてないのに先走ってプロローグを書いたりしながら夏休み。午前中に高校へ行って部室の扉をあけたら由紀乃が全裸で立っていた。


「ひょ?」


 予想外の出来事だったらしく、由紀乃がキョトンとした顔でこっちを見た。純白の肌――というか、アジア人だから黄色なんだが、なんていうか、その、俺とは明らかに体型の違う、ボン、キュ、ボーンの、胸とか、くびれた腰とか、あと、アンダーの、へそと太腿の間の部分とか。意外に薄毛だった。


「うわ絶景だなー。モロのビーナスだ」


 我ながらとんでもない感想が口をついた。驚くと人間は予想外の反応をするらしい。少しして由紀乃が真っ赤になる。


「ギャー!」


「おおおまえ、ギャーってな」


「なんでいるんだ馬鹿! ギャー!」


「なんでって、ここは部室だろうが!」


「だから、なんでいるんだよ午前中に! ていうか、ギャー見るな馬鹿! 部活は午後からの話だったろうが! でてけ! でてけでてけギャーでてけ!」


「言われなくてもでるって!」


 俺は部室を飛びだした。何をやってたんだ由紀乃?


「ほら、もういいよ」


 五分ほどしたら由紀乃が部室から声をかけてきた。ビビりながら扉をあけてみる。


「安心しろ、もう服を着てるから」


 赤い顔で由紀乃がにらみつけていた。ちゃんとワイシャツとスカートである。暑いせいか、ブレザーは羽織ってない。


「あービックリした」


「それはあたしのセリフだッつうの」


 いや俺のセリフだろう。席に着いたら、赤い顔で頭から湯気を吹きながら由紀乃が向かいに座った。


「いい? いまのはただの事故だったんだからね? 忘れないと殺すからね? それから、誰かに言っても殺すからね?」


「安心しろ。そこまで口は軽くないって。それに、もう覚えてないし」


「本当に?」


「信用しろ。もう忘れた。俺は何も見なかった」


 なだめるように言ってから、俺は疑問に思ったことを口にしてみた。


「それで、なんで、あんな格好してたんだよ?」


「やっぱり覚えてるじゃん!」


「あたりまえだ。催眠術にかけられたわけじゃあるまいし、本当に記憶から消すなんて不可能だって。なかったことにしてやるって言ってるんだよ。それよりも何があったんだ?」


「なんていうか、その」


 由紀乃が恥ずかしそうにうつむいた。


「水着に着替えようと思ってたんだよ」


「は?」


 言われて気づいた。シャツを透かして、赤いブラが見える。いま、水着を下に着ているらしい。


「なんで水着を着ようとしたんだよ」


「午後、妹と一緒にプールに行く約束をしてたんだ」


「へえ」


 由紀乃って妹がいたのか。


「ほら、夏休みだし、たまには遊んでやらないと。それで、どうせ文芸愛好会の活動なんて、三時くらいにおわるだろうから、そのあとでプールに行こうって約束をして、で、水着を持ってきたんだけど、去年の奴だから、その、ひょっとして、ふふふ太っちゃってて似合わないとまずいんじゃないかな? て急に思って、それで、ちょっと試着してみようって気になったんだよ」


「なるほど。話はわかった」


 俺はうなずいた。


「ただ、だったら、更衣室で着替えればよかったんじゃないか?」


「あたしもそう思ったんだけど、さっき行ったら、どこかの部活動の連中が占領しててさ。それで、文芸愛好会の活動は午後からだって約束だったから、どうせ誰もこないだろうし、大丈夫だと思って服を脱いでたら、いきなり空気読めてない馬鹿がきて」


「馬鹿はおまえなんじゃないか?」


 俺はあきれた。ま、やっちまったもんは仕方がない。


「というか、なんで佐田は午前中にきたんだよ?」


「俺は、由紀乃と静流がくる前に、ここで夏休みの宿題やろうと思ってたんだ。あと、静流に教える内容の再確認かな。由紀乃は?」


「あたしは自分の部屋でダラダラしてたかったんだけど、なんか、クーラーの調子がおかしくてね。家にいても暑いだけだからでてきたんだ」


「なるほどな。で、その妹は?」


「午前中は友達と勉強会の約束があるって言って最初からいなかったんだよ」


「ふゥん」


 返事をしてしばらく見てたら、うつむいてた由紀乃が顔をあげた。


「あのさ、さっきのことなんだけど」


「安心しろ。本当にもう忘れたから」


「あ、そうじゃなくて。いやそれはそれでいいんだけど」


 いいなら何が言いたいんだ? 訳がわからず見てたら、由紀乃が思い切ったみたいに口を開いた。


「責任とれ」


「は?」


「だから責任。あたしの裸を見た男って、お父さん以外だったら佐田がはじめてだし」


「生まれてすぐ、産婦人科の先生に見られたと思うけど」


「うるさい。いいから責任とれ責任」


「責任ってどんな?」


「おまえも裸になれ」


 とんでもないことを言ってきた。由紀乃が赤い顔のままにらみつけてくる。


「だって、あたしだけ裸を見られて、佐田が普通っておかしいじゃん? こういうときは、付き合いで佐田も脱ぐのが基本なんじゃね?」


「どういう基本だそれ」


「いいから脱げ」


 言いながら由紀乃が立ちあがった。目つきがおかしい。恥ずかしすぎて脳みそがショートしたのか?


「ああああのな? 落ちつけって。俺みたいな奴の身体なんか見たっておもしろくないから」


「おもしろいかおもしろくないかはあたしが決めることなんじゃね?」


 ヤバい目つきで由紀乃が近づいてきた。


「いいいやあの。というか、ここは文芸愛好会だから」


「その文芸愛好会で人の裸を見たのは誰だったよ?」


「それはおまえが水着になろうとしたのが悪かったからじゃわわわ」


 俺は立ち上がった。由紀乃が怪しい手つきで近づいてくる。


「おらー! ごちゃごちゃ言ってないで裸になれー!」


「うわー! 変質者ー! ちち痴女がいるぞ痴女が! 誰か! 誰かー!」


 逃げようとする俺に由紀乃が襲いかかってきた。後ろから抱きついて、俺のブレザーを脱がしにかかる。


 静流がやってこなかったら、俺は冗談抜きで全裸にひんむかれていたことだろう。

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