深夜、将来について悟る。


 やっと、やっと将来一番やりたいことが見つかった。

 それは、作家だ。

 何故か。

 それは、それをやった結果、”認められた“からである。


 人間は誰しも、認められたいという欲望を持っている。誰でも、それこそ幼稚園児でも知っているようなことだ。

 社会、それこそ会社というのは、そんな欲望を煽ることで人に仕事をさせている。全く、恐ろしいシステムだ。

 俺にも、もちろんそんな欲望がある。

 むしろ、他人から認められることが多くなかった(すなわち、幼い頃の成功経験に乏しかったのであろう)分、それは強かったのかもしれない。

 褒めて褒めて、と、言葉で表さずに、態度で——それこそ自分でも気がつかないうちに——アピールしてたのだろう。

 誰かに認めて欲しい。

「認められなくてもいい。どうせ自分にできることなどないのだから」と、諦めたような言葉とは裏腹に、無意識ではこんな泥臭い自己顕示欲が渦巻いていたのだ。

 思えば、鉄道に深くはまり込み、その深い知識を手に入れようとしたのも、どこかで「俺はこんなに鉄道のことを知ってるんだ! だから、認めてくれよ!」なんて思っていたのが一因なのではないか。

 さらには、小説執筆ももしかしたらそれかもしれない。

「俺はこんなこともできるんだ。すごいだろう。だから(以下略」

 そんなものだったのかもしれない。

 マウントを取ることで、存在価値を示す。そうして、認められる。

 単純な本能だ。猿の世界とまるきり同じだ。

 それはともかく。

 俺はそんな欲望の輪廻に魅せられて、ハマってしまったのだろう。

 認められ出せば、さらに認められようとして……。

 そんな単純な自然の摂理にはまり込んだのだろう。

 だからこそ、俺は正直に言おう。


「もっと認められたい、故に俺は作家として生きたいのだ」


 正確に言うと、認められ出した、という段階なのだが。

 現在、俺の代表作は、なろうでおよそ150pt程度の評価を得ている。

 そのほとんどがブクマなのだが、それでも、ある程度読んでくださっている人がいるらしい。

 カクヨムでも、フォロアーがおよそ150人もいらっしゃる。最新話を投稿したらすぐにハートがつく。そして、今(書いてる最中片手間で)見たら、33000PVを突破していた。誠にありがたいことだ。

 ようやく、底辺を脱した感がある。

 時々、上を見て悲しい気持ちにもなるが、それでも嬉しい。

 もっと高みを目指したい。なんなら小説で稼ぎたい。物語を作る仕事で食べていきたい。

 そう思えてしまうほどには、俺も単純だったのだ。

 今まで気がつかなかった、本当の自分の思いを知ったとき、俺は興奮で震えた。

 胸が苦しい。全身が鼓動する。何かが込み上げる。

 そして、その感覚がとても心地よく感じた。

 アニメの主人公なんかがよくいう、「ワクワクした」という気持ちはおそらくこういう感覚だったのではないか。そんな風に思った。

 深夜にふと思い立って、笑いながらこんな文章を書いてしまうほどには、嬉しかったのだ。


 さて、話は現実に戻る。

 現実的に、常識的に考えて、物語で食っていくなんてことは無理である。常考である。JKである。

 悲しいことに、本業として何か別の仕事をしなくてはならない。

 そこで、現在志望している電気工事士という仕事が出てくるのだが……ある恐ろしい疑問が湧く。

 果たして、副業として小説を書くということは、できるのだろうか。

 多忙すぎて小説を書けないとなれば、正直なところ俺などただの役立たずのドジである。

 評価されるほぼ唯一とも言える材料を失い、生きる糧を失い、最終的に自殺するかもしれない。

 そんな未来がたやすく想像できてしまうから、恐ろしい。

 それ故に、今、俺は深刻に悩んでいるのだ。

 仕事と趣味を、本格的に両立できるような仕事。

 拘束時間があまり長くないような、自由な仕事。

 そんな夢を見つつ、悩みながら日常を過ごしていこう。


 ああ、専門学校のAO入試の結果が怖い。不安だ。

 そんなことを呟きつつ、今日は筆を置こう。

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今日も意味なし 〜戯言エッセイ〜 沼米 さくら @GTOVVVF

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