第1話-2

大手ショッピングモールをふらふらと歩く。愛莉はこれ可愛いとか、これ欲しいとか。あまり参考にならない女物を手に取っては嬉しそうに笑っていた。


買ってるわけじゃないのに。何がそんなに楽しいのだろう。


「ゆき!いまから麻美来れるって」


私が男女どちらでも問題は無いのではないかシンプルなデザインのマグカップを手に取って悩んでいるとそう声がかけられた。

「わかった~」

適当に返事を返しマグカップ。そこへ戻す。

指定された金額は3000-5000円程度、1500円のマグカップでは見劣りがするであろうとの判断からだった。


「かわいのに、それ。自分用とかは?」

「あー、サークルのとこ置くヤツ?考えとこ」

「ゆき置いてないもんねえ、麻美もそうだけど。先輩達置いていいよって言ってるし私こないだ持っていったよ」


そんな会話をしてると愛莉のスマートフォンが鳴る。画面には麻美ちゃんの文字。知り合った頃の名残である呼称。その着信は彼女の到着を知らせるものだった。


その日購入したものは愛莉は凡そ3000円のシンプルなマフラー、私は2500円の来年のシステム手帳(1月始まり)、麻美は不参加ではあるがあげる人がいると綺麗なペアグラスを購入していた。


「ゆき、帰りにあのマグカップ買っていかなくて平気?」

「ああ、愛莉ちゃんがさっきいってたやつ?寄るなら行こー」


夕食をショッピングモール内のテナントで済ませた私達は帰ろうとしていた。


「今いって、売れてなかったら買うよ。」


そう言って私のその日の購入品が増えることとなった。白地に手書き風の味のあるクロネコがワンポイントで描かれるそれはどこか寂しげで。何となく買っていかなければいけない気がした。


「じゃあ明日ね」


麻美の一言で、私達はそれぞれ家路についた。

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新次君と平野さん。 s1n @hina4ri

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