新次君と平野さん。
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第1話
今週末に私がこのサークルに所属して初めてのクリスマスがやってくる。
明らかに浮き足立つカップルたちを尻目に私は『3000-5000円程度の男でも女でも問題なく在り来りだが喜ばれそうなプレゼント』を探すためにスマートフォンとにらめっこしながら珈琲店で友人を待っていた。女の子だけとか、男の子だけならばここまで悩むこともなかったであろうが独り身が多く参加する我がサークルのクリスマス会。主催であるサークル長の『女の子からプレゼントが貰いたい』という要望により男女別のプレゼント交換は却下されることになった『お菓子とかでいいから女の子でも男の子でも問題がない』ものを3000-5000円程度で見繕うように参加者にはお達しが来たのが先日のこと、私に参加を促した友人に押し負け参加することを伝えた後という最悪なタイミングであった。
「ゆき、おまたせ~!」
そう言いながら私の席の前に生クリームにたっぷりのチョコレートソースがかかった甘さで人が殺せそうなドリンクが置かれる。そのままそこへ腰をかける人物、参加を促した友人、愛莉だった。
「待ってないよ、レポート大丈夫だった?」
「大丈夫、ギリ間に合った。江口君手伝ってくれてー、そういえば江口君たちもクリスマス会来るみたいだよ」
「へぇ、誘ったらデート出来たんじゃない?」
「やめてよーもう!」
満更でもなさそうな顔で私の方をばしばし叩く愛莉。私の目から見たら二人はもう両想いだし、デートをしてくれたら私は参加しなくて済むのに、なんて考えてしまう。
「ゆきこそ、新次君誘ったら良かったのに。二人仲良いじゃん!」
「普通だよ、愛莉達みたいに出かけたりしたこともないし、レポート手伝ってもらったことないよ」
「ゆき頭いいからでしょ」
「よくない、愛莉みたいにギリギリまで手をつけないなんてことしないだけ」
「えー?今回は頑張ったよー」
頬を膨らませて不服気な愛莉は女の私から見ても可愛いと思う。
私は冷めかけたエスプレッソを飲み干した。
「今回はでしょ、ほらいくよ」
「はーい。プレゼント位1人で選んだらいいのに」
愛莉は持ち帰りができるようプラスチックの使い捨てカップに入った甘ったるいそれを持ち席から立った。
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