プリクラ
キム
プリクラ
放課後。
いつも通りに校門の前で待ち合わせていると、優子がやってきた。
私と違う赤い色のスカーフと襟の制服姿は、彼女が私の後輩でこの高校の一年生である証拠でもある。
「お待たせ」
「ううん。じゃあ、帰ろっか」
しばらく喋らずに二人で歩いていると、ふと優子が声を上げる。
「あ、そうだ」
まるでたった今なにかを思いついたかのようなその言葉は、しかし前もって考えていたもののように聞こえた。
「プリクラを撮りにいくわよ」
駅前のゲームセンターに入り、プリクラが設置されている場所へ着く。
「ちょっと待ってなさい」
そう言って優子はどこかに行ってしまう。
一人で残されてちょっと不安になったけど、優子が待っていろというのであれば待つしかない。
しばらくして戻ってきた優子が手に持っていたのは、うさぎ耳のカチューシャだ。コスプレ用の衣装などを貸し出している場所から持ってきたのだろうか。
「これ。つけて」
「え……つけて、って」
流石に高校三年生にもなってうさみみは……恥ずかしい。
「ちょっと、恥ずかしいかな」
「恥ずかしいとか着けたくないとか、そういうのは聞いてない」
やんわりと断ろうとしたが、優子はそれを聞き入れてくれるつもりはないみたいだ。
「つけて」
少し鋭い目つきで言わると、私は頷いて彼女の希望通りにその耳を頭につけた。
「似合ってるわ」
目を合わせたままそんなことを言われるものだから、恥ずかしさよりも嬉しくなってしまう自分がいる。
「さ、撮りましょ」
『ポーズを取ってね!』
機械に指示を出されてどのようなポーズを取ろうか悩んでいると、画面の方を向いたままの優子からぶっきらぼうに言われる。
「手」
手をどうするかなど、聞くまでもない。
私が手を胸元まで上げると、優子は指を絡めるように私の手を握る。
ぎゅっと握られたその手が少しばかり汗ばむのを気にしていると、優子が空いてる手を私の腰に回してきて、体がぐっと引き寄せられた。
ちょっと体勢が崩れかけると、私の頬が優子の頬に触れた。
「これで」
そう言われて、じっとしたまま機械が数えるカウントダウンの声を聞く。
『3、2,1……』
パシャッ!
撮影の瞬間。
自分はどんな表情をしていただろう。
そんなことは数十秒後にはわかることだ。どうでもいい。
今は、優子と繋がっているこの手と、腰に回されたままの優子の腕の感触を少しでも感じていたい。
ポーズを変えずにそのまま二回ほど撮影をした後、機械の外にある受け取り口から印刷されたプリクラを手に取る。
そこには困った表情の私とは対照的に、小悪魔的な表情で舌をちょっぴりと出した優子が写っていた。本当に優子はどんな表情をしていても可愛い。
「それ、あげるわ」
優子がプリクラを見ながらぶっきらぼうに言った。
私と撮ったプリクラなんて、どうでもいいということだろうか。
少し寂しく思いながら再びプリクラを見つめていると、優子がちょっと咳払いをする。
「誕生日おめでと」
えっ、と言って顔を上げると、優子はそっぽを向いて耳を赤くしていた。
「二度は言わないわ。帰るわよ、渚」
「うん……うんっ! ありがとう!」
優子と出会ってから初めて迎えた私の誕生日。
この日は優子から大切な
プリクラ キム @kimutime
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