EP24 異世界メドレー#2

深夜の暗雲、最悪の組み合わせで視界は悪い。戦いの真っ最中、敵と味方、たがいに探り探りで間合いを詰めていく。


敵は数十、こちらは僕入れて二人…


「…任せて」


声と同時に火の雨が降り注ぎ、辺りを照らす。

もう一人の味方、彼女の魔法によるものだ。


攻撃魔法を陽動ようどうに使用し敵を暗闇からあぶり出す。

火から逃げ惑う敵を彼女は自身の愛剣で瞬く間に斬って斬って斬り倒していく。


「ボーッとしないでっ!まだまだ来るよ!」


彼女にそう言われると僕もまた腰の銃を手に取る。

もはや相棒と言っても過言ではないこの銃での早撃ちを得意とする僕は…


「避けれないぞ…」


刹那、銃弾は見事に敵を撃ち抜いていく。

しかし中には盾でこれを弾く者も。


「なるほど、だが悪いけど僕だって一応、魔導士さ」


雷の光線を手から放つ、僕の必殺技。

勢い良くやりすぎたのか横で戦う彼女の怒号どごうが聞こえてくる。


「ちょっと!私に当たったらどうするのよっ!!!」


「ごめんごめん、やりすぎた…」


彼女へ平謝りしながら周りを見渡す。

敵の屍が転がる…どうやら一掃できた様だ。


「何とか片付いたね…さっきの魔法は流石さすがだったよ、レオニエ」


「覚えたてでまだまだだけどね。あなたこそ、早撃ちは素晴らしかったわ」


互いを称賛しょうさんし彼女は剣をさやへ、僕は銃をしまう。


「君と共に戦うのもあと数日だと思うと惜しく思うよ。かなりの戦力なのに」



数ヶ月前、二つの某国による戦争が終結したものの、帰る場所を失った者や残党達が後を絶たずいる。その為、小さな街や村を狙って強盗する奴も多く犯罪が増えていってる。


彼女は旅人で、寝床と食事を提供する代わりに僕の街の警備隊として一月ひとつき程、とどまってくれている。


「私が居なくてもやって行けるわ、貴方がいるもの、それに…」


「そうだった。確か探してる人がいるんだったね」


彼女は人を探して旅に出たそうな。

元は一国の騎士だったそうで、その腕前は並々ならぬものらしい。


「僕も同行出来たらいいんだけれど、街を離れるワケにいかないから、助けになれなくてごめん」


「いいのよ、あなたは悪くないわ。謝らないで」


松明たいまつに火を灯し彼女の「さて、帰りますか」と言う声に頷きは街の方へと歩き出す。


歩き出したはずだった。


「今回は流石に帰ってすぐ寝床に着きたいね......あれ、レオニエ?...レオニエ!おーい、レオニエ!何処行ったんだ...?」


その場には僕一人、音一つ立てず彼女は消えたんだ。何も痕跡はない。辺りを軽く探し回ってはみたが見つからず、僕は自分の街へ戻った。



「...ない」



街がない。故郷があった場所には瓦礫が転がり、廃墟が並んでいた。

だが一夜にして無くなったわけではなかった。

廃れた建物には草木がまとわりつき、まるで何年も何十年も何百年も経っている様な...


そこで僕は気づいた。

消えたのはレオニエではなく僕の方だと。


無気力に座り込む。

暗雲は晴れ、夜月が僕の顔を照らす。


「どうしたものか」

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All Dream Story 宵慕 悠 @HIYUEX-S

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