第48話 『あやかし冥菓見本帖』番外編完結と薬駄菓子

 『あやかし冥菓見本帖』「番外編 羊羹の日記念 新作羊羹選手権」、無事完結しました。

 現在参加しているコンテストの文字数が16万文字以内ということなので、今回はコンパクトにまとめました。

 今さらながら、文字数のことを考えますと、番外編だけ別にまとめ直したいのですが、いただいた貴重なコメントをとっておきたいので、当面はこのままにしておきます。


 さて、作中に登場した、おくらさま発案、製作及びプレゼン艾人がいじんの出品作品、菓銘「千種願人ちぐさがんにん」ですが、



「二品目は、艾人とおくらさまの合作、さいころ状の真っ黒なあられ菓子のような羊羹だった。

 見た目も怪しげだが、薬草を煎じたような鼻を摘まみたくなるにおいがする。

 器は、蔵でほこりをかぶっていた塗りのはげた漆器に、反故紙を敷いたもの。

 最早、和菓子ではなく漢方薬のような代物だった。」


「得も言われぬ苦味と薬くささに、玉兎は、それでも平成さを保って水で流しこんだ。」



 と、薬くさい、苦い、と散々な評判でした。

 が、評判はよくなかったにも関わらず、郷土資料館分館館長が決める審査員特別賞に選ばれました。



 なぜでしょう?



 さいころサイズというのが、ポイントの一つです。

 おばあちゃんのうちの、木でできたお菓子入れの中で見かける、お茶請け菓子のオブラートに包まれたゼリー菓子、あのイメージで、一つずつ包んである一口サイズのお菓子は、手土産に最適です。


 薬くさい、というのも、実はポイントの一つです。

 ただ、甘い、美味しいというのであれば、わざわざ其処で買わなくても、という気持ちになります。

 郷土資料館分館のミュージアムショップなので、郷土ならではのもの、資料として保管されそうなもので、そこでしか買えないものが、目を惹くことでしょう。

 

 駄菓子の種類に、薬駄菓子というのがあります。

 薬駄菓子は、植物が薬として身近だった時代のものです。

 明治時代に入ってからは、お菓子屋さんが扱っていました。


 紫蘇、薄荷、肉桂、生姜汁、胡麻、榧の実、柚、防風の葉、ヤマゴボウ、大豆、

砂糖など、主に植物を原料とした、病人や産婦の滋養のためや薬効(薬事法改正前)をうたったお菓子のことです。

 例えば、「萩花糖」は、紫蘇の実を穂のまま陰干しして砂糖蜜につけて乾燥させてから色づけして萩の花に見立てた、紫蘇の清涼な香りがする毒消しです。


 薬駄菓子をはじめとした全国の駄菓子の調査行脚をして、イラストと文章、紙粘土で作った模型といった資料に残した人がいます。

 仙台市の飴屋の二代目、石橋幸作です。

 彼の残してくれた貴重な駄菓子資料の展覧会を、以前、見に行ったことがあります。

 その時の様子は以下のページでご覧いただけます。


『本を買いに行きました』

四十箇所目 LIXIL GALLERY LIXIL BOOK GALLERY 京橋(東京) https://kakuyomu.jp/works/1177354054882605676/episodes/1177354054886906239


 それらの資料は、ふだんは、博物館 明治村に所蔵されています。

 博物館でお菓子の資料を扱っているのであれば、郷土資料館でも!

 ということで、薬駄菓子を思わせる、菓銘「千種願人」が選ばれたのです。


 番外編、お読みくださり、また、コメントもありがとうございました!




※富士見L文庫×COMIC BRIDGE 「頑張る女子主人公コンテスト」参加中

『あやかし冥菓見本帖』

 https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054884556736






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