第2話 運命の出会い
間もなくホームには急行電車が入って来た。智美にとっては、いつも乗る電車より二本遅い電車である。しかし、いつも30分ほど前には出社していた智美は、何とか間に合うだろう気持ちで乗り込んだ。車内は
『もう!これだから遅い時間に電車に乗るのは
智美の立った位置は客席の間の中途半端な場所で、
『これじゃあ、お化粧も出来ないじゃないのよ!今日は本当についてない日だわ』
寿司詰め状態の車内の中にあって、乗客が一歩たりとも動けないような状態が、
『何?お尻の辺り、変に当たってんだけど、このギュウギュウ詰めの状態じゃ、仕方ない…って!違う!
『このままじゃ、下着から触られちゃうよ。お願い、辞めて!』
「い…
「オイ!アンタ、オレ見てましたよ。この女性の身体を触ってたでしょ?」智美の左隣にいた長身のピッとしたスーツが良く似合う若い男が小太りの男の腕を
「アンタ、ここで降りてもらうからな」長身の男は小太りの男の腕を
痴漢をした男は駅員により、そのまま駅長室へと連れて行かれ、事情を聞きたいとの事で、長身の男共々、智美もついて行った。
間もなく鉄道警察官が駅長室に現れ、事情を聞かれる事になった。
「それで、あの男にどんな感じに触られたんですか?」警察官の質問に智美は戸惑ってしまった。
「お巡りさん、彼女は被害者です。それも女性にとって卑劣な犯罪のね。オレは一部始終と言う訳ではありませんが、彼女が変な反応を示してから直ぐに異変を感じて、それからずっと見ていました。オレが話すので、彼女はオレの言う事が間違いなかったら
「それじゃあ千脇さん。あなたは何故、気付いてから直ぐに注意をしなかったんですか?」警官は鋭い目付きで
「もし注意したとして、変な言い逃れされたら困るでしょう?車内は蟻の入る
「なるほど。では、あなたが言ったように本当に触れてしまっただけと言う事はないんですか?」罪を追求する警察官と言えども、
「もちろん、確信を持っていますよ。オレはしばらくは見ていましたが、触れていた手が徐々に動き出して、
「なるほど、分かりました。まぁ今日はこれくらいで良いとして、また聴取にご協力を願う事があればよろしくお願いします」こうして痴漢被害者とその目撃者は開放された。
「あの…本当にありがとうございました。えっと…千脇さん?」
「いやぁ、男として当然の事をしたまでですよ。それより許せませんよね!」伊織は
「あの…改めてお礼がしたいので、ご連絡先の交換をしてもらっても…」智美は久しぶりに乙女のようなときめきを感じていた。
「お礼なんて…まぁ、連絡先の交換なら」そう言ってお互いに会釈をして別れた。
「やっぱり運命の出会いってあるんだ!きっと彼は独身で恋人もいないに決まってる!」
最悪の一日の始まりから、思ってもいない出会いに有頂天になった智美は、会社に遅刻してしまっている事も忘れて、すっかり浮かれてしまっていた。
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