シャドウラッフィング

影に怯えている。

あるいは、陰に怯えている。

君はすぐ隣にいるのに、どうして僕は、こんなにも震えている?


影から逃げるためにずっと走ってきたのに、いつまでもソイツは僕の足元にいて。

あろうことか、時々牙を剥いてきたり。

いい加減にしてくれよ、なあ。

ようやく暗いドブから這い出してきたってのに。


愛は闇を照らさない。

希望は雲を晴らさない。

知りたくなかったけど事実だ。


僕はもうとっくに救われているのだろう。

救われた上で、恐怖が背中にしがみついている。

守りたいものもできたよ。

離せない人ができたよ。

それでもダメなのか?


影は何も答えない。

ただニタニタ笑っている。

醜く、薄汚く、カラスの死骸みたいに笑っている。

鏡の中から、腹の底から、窓の外から、明かりの後ろから、ニタニタニタニタニタニタニタニタ。

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詩ね 佐久間 涼 @sakuma_ryo

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