第32話 四番エリア
自分の番が終わり俺は驚くほど清々しかった。背負っていた重荷が無くなったというか、張り付いていた淀んだ物が消えたというか驚くほど身軽になった気がする。
Bクラスが終わりAクラスに行きルーシュの番になる。久々にちゃんと見た気がするが、その堂々とした雰囲気は以前となんら変化はない。
ルーシュが祈る。皆んな注意に従い儀式中は一言も発さず見守る。静寂が生まれるがそれは一瞬で変化によって掻き消される。
泉が力強く繊細な赤色の輝きを放つ。光り輝いている泉の所々から光がルーシュの手前に集まり、今までとは違い目を細めてしまう程の強い輝きを放った。
輝きが止み小さい精霊の姿が露わになる。皆がその精霊の外見に見惚れて「神秘的だ」などの漏れ出した声も聞こえる。
確かに他の精霊より派手だが、そこではなくその精霊が持つ力の膨大な力には驚きだ。
その小さい体のどこにしまっているか不思議なくらい強大だ。
ただ――
殺せる。
いや、ダメだ。そんな程度の低い事で判断してしまったら脳筋だった前世と変わらない。
力には問題が集まる。
嫌という程学んだことだ。あの精霊の力という事はルーシュの力にもなる。様々な問題のパターンを想定して動くことを意識しないといけない。保険の保険の保険までかけるくらいが丁度いい。
「おぉ!おめでとうございます。とても力強い精霊に愛されましたね」
やはりそうだ。あの小さい体から漏れ出している力は偽物じゃない。
エルフ達が拍手を送ると、それにつられるように生徒達も拍手を送る。ルーシュは拍手が雨のように降ってくる中堂々とした態度で戻っていく。
儀式が終わる。テノールが締めて次の予定を話す。次は四番エリアに移動するとのことだ。
四番エリアまで最低限に整備された道を歩く。エルフの里に着いた直後のように緊張した空気は無く生徒同士や生徒とエルフの会話もある。儀式で生まれた精霊は自由に飛び回っていた。
四番エリアに着いた。以外に短時間で着いた気がする。
四番エリアは、ちらほらと木造の建物――ログハウスや小屋など、大きさやデザインがバラバラな建物が建っている。生徒達も周りを物珍しそうに見渡している。都会だと見れなくてエルフの里ならではの光景だからだろう。
テノールが迷わず大きなログハウスが横並びになっている場所に向かい到着する。
「今日から我らが里にいるまでここで過ごしてもらいます。部屋分けはこちらで行いましたのでそれに従って分かれてください。着替えなど生活必需品はこちらで用意させていただきました。その辺りの詳しい説明は後にさせていただきます。え〜、ではお願いします」
エルフ達が指示をする。生徒達も事前に自分は何組か通知されていたのでスムーズに行動できた。
自分の部屋に向かう。俺は幸運に一人部屋だった。一人部屋だけあって部屋は狭いがプライベート空間が出来たと思えば小さい問題だ。早速部屋を探索する。トイレや風呂などは部屋にはなく共同の物を使うらしい。最低限の調度品しかなく机と椅子とベットくらいしかない。ベットに大きいリュックと小さい巾着袋が置いてあった。これが説明されていた生活必需品だろう。中身を確認するが普通に生活するには困らないくらいの品物が入っている。巾着袋には事前に送っていた下着が入っている。
俺はエルフが用意したエルフ独特の服に着替えて指示された場所に向かう。説明会を行うとのことだ。
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