第30話 儀式
最低限の整備が施された道を歩く。通りやすい様に整備しないのは、出来るだけ自然を破壊したくないというエルフの考えだろう。
生徒四十人とエルフ数人が隊列を組んで歩く。そこに雑談などは無い。だが別にその表情は暗くなく、緊張している様に見えた。アルトルクス学園の生徒は小心者が多いのだ。
列が止まる。恐らく目的地に着いたのだろう。
「え〜儀式の泉に到着しました。生徒さん達は周りのエルフの指示に従って行動してください」
テノールがそう言いそれと同時にエルフ達が一斉に動き出す。それはまるで事前に示し合わせたと思うほどスムーズな行動だった。まぁ実際事前に相談したのだろう。
儀式の泉は、水深が浅く綺麗な大きな円を描いている。そして中心には、森に生えている同じ鮮やかな草が生えた小さい楽がある。水の色は太陽光の反射で緑にも、青にもなる幻想的的な輝きを放っている。
生徒は泉を囲う様に並ぶ。皆んなその泉の幻想的な輝きに圧倒されている。ちらほらと言葉が上がりその波はどんどん大きくなっていくが一つの手を叩く音でその波はいとも簡単に打ち消された。
手を叩いたエルフの男性に皆んなが注目をする。
「これから儀式を始めます。とても神聖なものなのでお静かにお願い致します」
エルフがそう言い周りを見渡す。
するとテノールが飛び、生徒達はそれを見て驚く。あれが精霊術か?
「え〜儀式の方法は簡単です。この泉の中央にある小さい陸地に立ち祈りを捧げてください。祈りのコツは、精神を研ぎ澄ませ集中し木々の音や風の匂いなど自然を感覚で感じてください。では名前を呼びますので、呼ばれた方は中央に来てください。え〜では呼びますCクラス――」
呼ばれた者が前に出て手を合わせ典型的な祈りの形をとる。何秒間か経ちテノールが失敗を告げ次に進めるの繰り返しだ。その変わらない様子をみて殆どの生徒は疑いを持っているだろう。俺も少し「こんな儀式で?」と思ってしまっている。
だが変化が起こる。それは七人目辺りの頃、泉が青色の輝きを放つとその輝きが祈りを捧げていた者に集まり生物か生まれた。
誰も声を上げないでただ呆然とその光景を眺めていた。
だが俺はその様子を観察する。青色ということは普通に考えて水属性か。それにしてもあれが精霊というやつか。微精霊とは違って実体があるんだな。
パチパチと拍手が起こる。その拍手の発生源を全員が注目する。発生源は――エルフ達だ。
「おめでとうございます。見事精霊に選ばれましたね」
テノールがそう祝福すると、ちらほらと「すげー」など声が上がる。だが選ばれた本人は未だ戸惑っており、選んだ精霊はそんな気持ち関係ないと言わんばかりに自由に飛び回っていた。
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