第29話 エルフの里

 扉を抜けると自然豊かという言葉が似合う光景が目の前に広がる。

 俺は直ぐにBクラスの列を探し見つけて並ぶ。

 俺達がいる場所は木などの障害物は一切なく木に囲まれている。小さい草原のようだ。殆どの生徒は急にエルフの里に着いて、あまりの状況変化に対応しきれず少し浮き足立っている。

 まぁ確かに仕方ないだろう。さっきまで近未来的な地下施設に居たのに一瞬で大自然のエルフの里に着いたのだから。さらには沢山の民族衣装の様な見慣れない服を着た耳が長く尖っている人間――エルフが笑顔で出迎えてくれる。

 中には懐かしそうな目で周りを見渡しているエルフの生徒もいる。


「私はエルフの長老のテノールと申します。そこの校長先生の兄妹の兄もやっています。え〜私がエルフの代表としてアルトルクス学園の皆様を歓迎します。ようこそ!エルフの里へ!!」


 テノールという男が大きなジェスチャーをしながら声に緩急をつけわざとらしく話す。

 だが不思議とのめり込みそうになるほど注目してしまう。恐らくジェスチャーと声に緩急をつけているのもわざとだろう。さらにある程度言葉を崩しているのがわかる。推測するに生徒の年齢に合わせて聴きやすい様に崩しているのだろう。


 俺は驚愕した。魔法品の木の扉より驚いた。何故なら1500年前はエルフは研究や狩などに長けており社交的なエルフなど見たこと無かったからだ。恐らく魔族の次に社交性がなく閉鎖的だった。時代の流れを感じた。


 長老のテノールから説明を受ける。多少の冗談を混ぜながら聴きやすい様に言葉を崩しているので聴いていて退屈そうな顔の人物は一人もいなかった。


テノールの説明はアルト校長が事前に説明してくれたことが殆どだ。

俺は重要な要点だけまとめて頭の中で確認をとる。


 エルフの里は基本的に一番エリア、二番エリア、三番エリア、四番エリア、中央エリアと五つのエリアに分かれており生徒は基本的には四番エリアで過ごすらしい。というのも四番エリアはアルトルクス学園の生徒のために造られた。そのため他のエリアよりかは遥かに小さくエルフも住んでいない。


 そして初日は精霊を授かる儀式を行う。

 精霊というのは多彩で色々な属性がある。まだ未出現な属性を持つ精霊も存在していて全ては確認出来てない。さらにその精霊が持つ力もバラバラで強い力の精霊に愛されてると目の色や髪の色が変わるらしい。


 ちなみにアルト校長は雷の精霊に愛されて髪が金色になって、テノールは風の精霊に愛されて髪と目が空色になったらしい。これは初耳だ。


 エルフは狩の儀式や魔術のテストに合格すると精霊の儀式を行ってもらえる。俺達生徒はそれを取っ払ってやってくれる。


 そしてエルフは精霊に愛されていて全員が精霊を授かるのだが、人間などの他種族は精霊を授かる確率はかなり低い。


 前世では、エルフの里には仕事の時しか訪れていない。何回か仕事をこなして感謝されたが交流などは一切なく、エルフの事も精霊の事も資料や他人の体験談からしか知らなかった。その情報だけで抱いていた感情はあまり良いものではなかったが、時が経ち俺の状態もエルフの里の状況も変化しており今はかなりの好印象を持つ。


「それじゃあ、儀式の泉まで行きましょうか」


 テノールがそう言い全体が素早く動き出した。

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