第27話 目標

 最近俺は自分自身の変化を感じていた。


 一つ目は、目つきが良くなっていることだ。前までは、目の下の隈も濃く輝きのない目をしており、例えるなら人殺しのような有様だった。だが今は、隈も少し薄くなり目も大きくなったため根暗と言えるくらいまで良くなっている。

 二つ目は、性格の変化だ。前までは近寄る者全て敵という思いを抱いていたが、今は余裕があり穏やかになったと思う。これは前世の殺伐とした環境から、穏やかな日常という環境に身を置いたからであろう。

 三つ目は、力に頼らなくなったところだ。前世では物事を暴力で解決していたが、今は意識しなくとも自然と頭を使って解決しようとしていると思う。これは成長と言っていいだろう。


 あるイベントが差し掛かって来ている。あるイベントとはエルフの里訪問だ。具体的な内容としては、エルフの里に行き精霊を授かり精霊術学んだり、魔術を学んだり、モンスターの事について深く学んだりなど沢山の事を知る行事だ。

 行くのは一年生だけで二年生三年生は留守番だ。


 ちなみにエルフの里の長老はアルト校長の兄妹で兄だ。つまり兄も俺の事を知っているということだ。だが騒がれる心配は無い。何故ならアルト校長に頼んで根回しはもう済んでいる。


 生徒の情報も頭にしっかりと入っているしルーシュとはあれから関わりない。今のところ順調だ。

 小さな悩みといえば、スズが次回のテストに向けて俺に執拗に勉強を教えていることだ。有り難い事なのだが、出来るだけ広く浅い関係を広げたい俺はいつどんなボロを出してしまうか気を張ってしまう。毎回やんわりと遠回しに断っているのだがそんな事は御構い無しに俺に勉強を教えるのだ。

 まぁ迷惑だが助かる部分もある。教えてくれているお陰で次回のテストはかなり自信がある。


 スズの授業を聞いている内にスズの賢さを改めて思い知らされている。おそらく俺がどんなに頑張っても学力面でスズには勝てないだろう。つまり学力で一位を取れないということだ。だが俺にとっては逆に都合がいい。一位を取って目立つよりか二位か三位くらいで適度に目立っていた方がいい。

 俺は英雄なんて呼ばれていたが単純に殺す力があっただけで知恵は無いただの脳筋だ。学力面で順位を操作する程の能力は俺にはない。必死にしがみつかないと振り落とされてしまうのだ。ここまで来て退学など本当に笑えない。


 まずはエルフの里を無事に乗り切る、それが目標だ。この計画の期間は一生だ。期間が長いのなら一歩ずつ登っていけばいい。


 前世の二の舞なんて真っ平御免だ。

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