第二歩 エルフの里

第26話 相談

 物音一つなく静寂という音が聞こえそうな程静かな真夜中。俺はステルスを使ってある場所に向かっていた。ある場所それは、アルト校長の寝室だ。今回が初めてではなく定期的に相談に乗ってもらっているため何回か行っている。

 アルト校長は聡明な女性だ。つまり知恵を貰うのは必然だろう。


 アルト校長の屋敷に着き二階の寝室の窓をノックする。するとアルト校長は窓を開ける。いつもの流れだ。


 部屋に入ると、微精霊達が緑の輝きを放ち部屋を幻想的に照らす。


 アルト校長は俺に向かって深々と頭を下げている。やめろと言いたくなるが、俺はその言葉を口の中で転がしそれを無視する。何故なら以前何度もやめろと言ってもアルト校長はそれを聞かない。つまり、言っても無駄だということを理解しているから言わない。


「お待ちしておりました」


 アルト校長はいつも通りの決まり文句を言い笑顔で迎えてくれる。そんなアルト校長は、白い肌も整った顔も綺麗な金髪も、微精霊の幻想的な輝きに当てられ神々しさを感じられた。

 だが俺は動揺しない。その理由は二つあり一つは、前世の経験で耐性が付いていること。もう一つは、このようなアルト校長を見るのは初めてでは無いからだ。


 俺はアルト校長が用意した席に着きアルト校長も俺と対面の席に座る。


 俺は解決したのかわからないルーシュの事を話し始めた。

 ルーシュの事や自分の失敗、そして新しくできた興味深い人物の事を出来るだけわかりやすく話す。

 アルト校長も聞き上手で、適度に同意や相槌、質問などをする。


 俺は一通り話終わるとアルト校長は時間を少し開け考える仕草をする。

 考え終わったのかアルト校長は、俺の目を見て知恵を授ける。


「まず、ルーシュさんがどれだけ憶えているかが大切ではないのでしょうか?記憶が最初の方で途切れている場合は、注目されるとしてもそこまでです。記憶が最後まである場合は注目されるか注目されないの二択だと思います。確率としては注目されない方が大きいですね」


「もしルーシュが俺に突っかかって来たらどうしよう?」


「その時の内容によりますが流すのが最善と予想します。少し大変ですが嘘を付くというのもありだと思います。ですが嘘を付いた場合の時、相手がかなり注目していると危険ですね。嘘というのは追求されればされるほど矛盾が生じて簡単に剥がれます。なので結局は臨機応変な対応が最善ですね」


「なるほど」


 結局は臨機応変か。焦って逃げるとかは避けねばならないな。ルーシュがあの後目を覚めて、すぐに俺の所に来なかったし関わる確率は少ないと思う。あまり合わないようにしよう。


「それと聖女の情報はあるか?」


「エルザさんのですか?ありますけど一般的に知られている情報しかありませんね。時間を下さるのならばもう少し深い情報を集めれると思います」


「頼んでもいいか?」


「喜んで」


 エルザ・ダ・カトリック。勇者パーティーの一人で聖女。性格は穏やかで誰に対しても差別なく接し誰もが認める聖女だ。だがルーシュの時の件を見てどす黒い裏があると見た。あまり深く入ると面倒な事になりそうだが、その裏はどんな物なのかくらいは知っておかないといけないだろう。


 俺は深く考えていると体が眠気を訴えている事に気づく。


「じゃあ、帰るわ」


 そう言いながら席を立ち窓を開ける。後ろからアルト校長がいつもの長い挨拶をしているが、特に聞く必要もなかったし返すのが面倒だったので手を軽く上げて返す。


 そして俺は暗闇の中に消えた

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