第22話 扱い
午後の授業はルーシュの事を考えていた。
俺が調べた情報とアルト校長が言っていたルーシュの情報を整理する。
カトリック家に伝わる綺麗な銀髪とエメラルドグリーン色の瞳。姉とは正反対で落ち着きが無く、それは顔にまで出ている。
性格は、自分より下の相手には容赦なくプライドが高い。
成績は優秀で気力や魔術の評価も高く先生からの信頼も意外に厚い。交友関係も女子限定だが広い。そして――
重度のお姉ちゃんっ子だ。
俺はルーシュが恋人を作る理由に違和感を持っていた。
パシリが欲しいという理由なら恋人ではなく別の関係でもいい。それにただ姉が持っていない物が欲しいという理由は変だ。持っていない物が欲しいという事は、姉より勝りたい、つまり姉より劣っていると言っているような物。あのプライドの高いルーシュが見下している相手にそんな事をつまらなそうに言うのか。
それにルーシュは姉を尊敬している。それなら張り合う必要があるのだろうか。それとも尊敬しているからこそなのか。
いやそれとも――
「はい、じゃあ今日はここまで」
先生がチャイムの音と同時に言う。
俺は二つの音で考えを中断し帰りの準備をする。
とりあえずAクラスに行ってルーシュに会い話をするのが得策だろう。
クラスの前に着き教室を覗いてみる。
ルーシュと目が合いルーシュが荷物を持ってこちらに向かってくる。
「荷物持って待ってて」
「え?」
ルーシュは荷物を俺に押し付けて自分がいた輪の中に戻っていく。
一瞬苛立つがすぐに抑える。こんな事でダメにされてたまるか。
教室で友人達と楽しく話しているルーシュを見ると、その顔は俺に向けていた下に見るような顔ではなく一人の女学生がいた。俺はその様子を見て少し恐怖を覚えた。
ルーシュがやっと教室から出てきた。
「行くわよ!」
荷物を返そうとした俺を無視して前に進んでいく。
怒りで気力が少し漏れ出したが、漏れた全てを指先に集め隠していく。
俺とルーシュの間に沈黙が宿る。
そのまま歩き寮の近くまで来ると俺の手から荷物を無造作に取り挨拶もなしに女子寮に向かっていった。
俺はそんなルーシュの背中に無表情で中指を立てた。
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