第21話 ルーシュ・ダ・カトリックの告白
俺はコイツ――ルーシュについていく。全速力で逃走してもいいが、今逃げたら後で倍になって返ってくる事を俺は知っている。
着いたのは建物の裏。人の気配はなく目立たない場所だ。
ルーシュは振り返り無い胸を張る。
「私と付き合いなさい!拒否権はないわ」
ルーシュは笑顔で言う。
俺は困惑する。今日世界で一番困惑しているのは自分だと確信するくらい困惑する。
俺の頭の中を染めているのは『何故?』という疑問だった。
ルーシュとはAクラスで、カトリック家の次女つまり聖女の妹ということ。俺と関わりがあるはずがない。
「何故自分なんですか?」
当然の疑問を言う。言葉を崩さなかった自分を褒めてやりたいと思った。
「Bクラスなら誰でも良かったのよ。適当に楽そうな顔の奴を選んだの」
「何故Aクラスからじゃないんですか?」
「Aクラスの奴らは私に近づかないのよ!それにAクラスだと私が気を使っちゃうし、それなら気も使わなくていいBクラスを選ぶのは当然でしょう?」
ルーシュはつまらなそうに答える。ルーシュの性格は大体わかったし、それを考慮したら理解はできる。
ただ、気にくわない。沸々と沸き上がる怒りというマグマを抑える。
「何故わざわざ好きでもない人と付き合うんですか?」
「パシリが欲しいのよ。それと姉が持ってない物が欲しいの!ていうか、そんな事どうでもいいのよ!あなたは返事だけすればいいの!」
ルーシュは指を指してくる。その指を折ってやろうかと思うが我慢だ。
キレやすいというのが俺の弱点だとこの学園で思い知った。前世では俺を怒らせる奴は少なかったし、我慢出来なくても咎められる事はなかったからな。思えば脳筋だった。
心の中で深呼吸をしどうするか考える。
もし断った場合ルーシュの反感を買うことになる。下手をすればカトリック家に睨まれることになるかもしれない。いや、カトリック家は親バカで有名だ。その可能性も十分ある。
了承したら場合は、パシリに使われ飽きたら捨てられるオチが一番可能性がある。意外と大事にされるという可能性は――無いな。ルーシュの性格は元々知っていたが会話をしてみて聞いていたより酷い物だと知った。
一回付き合い使えない所をアピールするか?いや、ルーシュは意外に女子の交友関係は広い。俺がダメな男などの噂を流されたら全体の印象が落ちてしまう可能性大だ。
俺は様々な視点で考え結論を出す。
「あの、すみません。お断――」
「じゃあ今日から毎日学校が終わったらAクラスまで来てね!遅れたら許さないわ!」
ルーシュは気分良く俺の横を通り過ぎ去っていく。
俺は固まったまま動けなかった。
FUCK!
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